こんにちは、でらちゃんです。
第三者検証会社で働いていると、「ユーザ目線でのテストを実施してほしい」というオーダーをいただくことがあります。
「ユーザ目線でのテスト」という言葉の主な意図は、品質要素の一つであるユーザビリティを評価したい ということが多いです。
※アクセシビリティや、なかにはユーザ目線で「機能適合性」をテストしたい、という意図を含む場合もありますがアプローチが少し変わってくるのでここでは省きます。
なぜユーザ目線でのテストを第三者検証会社でやるのか
プロダクトを作る際には様々なステークホルダーがいて、それぞれが目的を持っています。
かなり極端ですが、それぞれのステークホルダーがプロダクトに求める事は、以下ではないでしょうか。
経営者 ⇒ そのプロダクトで利益をあげること
開発者 ⇒ 運用しやすく不具合がないこと
ユーザ ⇒ そのプロダクトを使って自分にメリットがあること
ところが、ユーザ自身は自分がどういったものを欲しているか、何が出来ないと魅力を感じないのか、それらを意識してその製品を使うわけではありません。
そのため、テストをする人は「自分がそのプロダクトを使った場合」という観点だけでは、正しくユーザビリティのテストを行うことはできません。
では、どういった観点ならば、「ユーザ目線でのテストを実施してほしい」という期待に応えられるのでしょうか。
私が実際にどのようにテストを考えているか、手順を追って書き出してみます。
ユーザ目線でのテスト内容を考える
1.プロダクトの訴求ポイントを考える
これは利用時の品質を考えるための前手順となりますが、
そのプロダクトが何をユーザに訴えたいのか、と併せそのプロダクトの目的を考えます。
ここを理解していないと、どんなに頑張っても、プロダクトの姿は商品企画の意図や要件定義から遠ざかってしまい、結果的に頓珍漢な評価を行っていたというリスクがあります。
2.ターゲットユーザを考える
そのプロダクトは、誰がいつ何の目的で使うのでしょうか。
50歳前半の男性が、N/W環境の悪い電車の中で通勤時の暇つぶしに遊ぶモバイルアプリなのか、20歳前半の女性が混んでいるコンビニのレジで決済を行うためのモバイルアプリなのか。
はたまた人命を扱う医療従事者が高い緊張感を持って医療現場で使うシステムなのか、学校の先生が生徒の個人情報を取り扱うシステムなのか。
どんなリスクがあるのか、どんな状況で使われるのかのペルソナを想定します。
そのターゲットユーザは、起床後、どんな一日を過ごしてどのタイミングでプロダクトを使うのかといったものでも良いと思います。
2を決めることで、次以降で考慮すべきことが変わってきます。
3.使用する環境を考える
使用環境はプロダクトによって全く異なります。
ネットワークでいうと、有線なのか無線なのか、社内の閉じられたインターネット環境下なのか、電波状況が悪い(ランダムに電波が遮断されるなど)場所で使われるのか‥、
媒体でいうと、古いOSを載せたメモリの小さいスマートフォン上で使うのか、機能を制限したかんたん携帯なのか‥、などなど、考えられることは沢山にあります。
2で考えたターゲットユーザと利用シーンを考えながら、環境について考慮すべき点を洗い出します。
4.操作性を考える
ユーザが効率よくそのプロダクトを用いて目的を達成できるのか、という観点で、画面遷移が認識しやすいものになっているのか、モバイルアプリでいうと、ジェスチャ(スワイプやピンチイン/アウト、長押し…)や、ハードウェアの戻るボタン等を用いて快適に操作できるのか、を考えます。
5.類似プロダクトを調べる
対象プロダクトがとても画期的という場合もあるのかもしれませんが、世には類似サービスがあり、その類似サービスにはあってテスト対象のプロダクトにはない魅力的な機能はないか、ということもチェックしたりします。
6.見えないものを考える
他の品質特性とも関わりますが、UIが変わらなくても、プロダクトの内部では処理が動いていることがあります。
ユーザはそんなに待てないので、処理中なのに「F5」を連打してみたり、アプリを再起動したり。
処理が行われていることをユーザが判断できるか(「処理中…」とか「プログレスバー」があれば待つ人が増えますよね)という事も必要です。
また内部で如何に複雑な処理が行われていたとしても、あまりに長い時間を待たされるとユーザは不満を持つという点を加味し、評価を行います。
最後に
上記はユーザ目線でテストを行う際の一例です。
自分の場合には、ユーザビリティのテストを考える際には、ISO/IEC25010「利用時の品質モデル」を見直し、抜けている視点がないかを考えたりもします。
なお、利用者が使いやすいかどうかという点と、利用者の誤操作やセキュリティを守るために敢えてそうしている点のトレードオフが発生することがあるという注意点は忘れずにいいテストができるように勉強していきます。