【第1回】AI時代に、「場」を通してつながる①~関係性で生じる「違和感」と、場をつくるという手段~│専門家2人による往復書簡

はじめに

皆さんは普段、テストや品質に携わっていて、関係性を感じることはありますか?

「Connecting The Dots」では、今まで現場やコミュニティの中で出会ってきた専門家の皆様と、往復書簡のような形で意見を交換していきます。
ひとりひとり独立した専門家という「点」を、技術や関心ごとといった共通点で繋ぎ、連載を形作ります。

本連載では、Sqripterの天野祐介さんとお話しします。

天野さんと私、経験も専門性も全く違うように見えますよね。
実は、私たちには共通項があります。(名前がおなじ「ゆうすけ」ですがそれではないですよ)

それはAIがあらゆることを効率化していく現代において、コミュニティや勉強会といった「場づくり」をしているという点です。

天野さんの話は次の書簡でお伺いするとして、まずは私の話をしましょう。

testingOsakaという実践

私自身、昨年から大阪で「testingOsaka」というコミュニティを立ち上げ、運営しています。

testingOsakaは、「テスト」という共通言語を通じて集うコミュニティであり、対象はテスターやQAエンジニアに限定していません。
というのも、「テスト」はさまざまなロールの人ーこれはエンジニアだけではありませんーが関わることができる共通言語たりうると考えているからです。

testingOsakaでは意図的に対話の場を作ります。
そして、そのための雰囲気作りや、自分自身の主催者としての存在感はどのようにあるべきか、そういったふるまいを意識しながら設計しています。

私にとってtestingOsakaを育てることは、大阪あるいは関西という地方(”東京ではない”という意味です)のアイデンティティの中で多様性を育てることでもあると思っています。
この場所からより強いプロダクト、チームやエンジニア、そしてカルチャーが生まれると、本気で思っています。

こうしたコミュニティを持続・発展させる上で、参加者の需要に答えたり、優しく受け入れることは大切だと思っています。
一方で、過度なホスピタリティはかえってコミュニティにとって毒だとも考えています。
参加者を過剰にお客様扱いせず、仲間の一員として迎えること、そして運営自身が一番楽しめるようにすること、つまり「運営が一番尊い」という姿勢を忘れないようにしています。

これは実は、スクラムフェスというイベントをしていくなかでスクラムギャザリング東京の代表である川口さんから教わり、学んだことだったりします。ここでもおそらく天野さんとのつながりがありますよね。

幸いなことに、この狙いは今のところ、成功していると思っています。
testingOsakaは1/3から半分ほどはテストの専門家であることが多いですが、残りは全然違うロールの人が「テストについて語りたい/学びたい/悩んでいる」と来てくれます。
※これは感覚的なもので客観的な数値ではないです

ゆるい運営、でもその背景には尊重と信頼があるような、そのようなふるまいを無理なく意識することで、testingOsakaが豊かになっていくのを私は感じています。

そして、私自身もtestingOsakaという場を作りながら、その場のエネルギーを最も中心で享受する人間の1人だと感じています。

「場」と「違和感」

testingOsakaを尊く、安全な場だと認識しています。
一方、私のなかでは別種の、緊張感のあるコミュニティ観も同居しています。

私は自分自身をSystem Fixerと名乗っているとおり、ソフトウェアだけでなく、組織や人間関係を含めた全体を「システム」と捉え、そこに潜む”不具合”に向き合いたいと思っています。

そして、この”不具合”はコミュニティや勉強会といった人が集まる場、それこそtestingOsakaや、例えば熱狂のあるカンファレンスのような「尊い」とされる場であっても、「居心地の悪さ」や「薄ら寒さ」があることを強く感じています。
かつて、私はその居心地の悪さの中心にいました。
少しコミュニティに慣れた今でもその当事者になることがあります。

まるで、生成AIが出力してくれる記事のようにーこの記事のことかもしれませんねー最適解を出してくれる、そのような空間が現実に存在しうるならば、こうしたノイズは排除されるべきかもしれません。

しかし私は、この「違和感」こそが、その人が本当に大切にしたい願いや、新しい関係性が生まれる兆しであると考えています。

私が最近興味を持っているプロセス指向心理学(プロセスワーク)の言葉を借りれば、それは一次プロセス(今の自分)と二次プロセス(新しい自分)の間にあるエッジ(境界線)に直面している状態です。

この違和感を強く感じ入り、そして乗り越えるために、「その場に止まる」というあり方の可能性を感じています。
この手触り、立ち現れる葛藤、そして対話(対話の対象は自分自身であることは少なくありません)はその人自身を、あるいはその場そのものを生成的なものにしていくプロセスであると考えています。

天野さんへのバトン

ここで、天野さんへのバトンを渡してみましょう。

天野さん自身も仙台に軸足をおき、さまざまな場づくりを実践され、今ではアバロスプラス株式会社を設立され、「場づくり」やそれを通した変容の当事者でもありますよね。

天野さんご自身をそのような場に誘った背景やお気持ち、そしてこれらの活動を続けるなかで意識していることがあれば、ぜひ改めてお伺いさせてください。

できればそれを、私のコミュニティに取り入れていきたいですね。

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SQRIPTER

山下 友輔(やました ゆうすけ)

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ソフトウェアテストに専門性を持つ、大阪在住のQAエンジニア。
2018年に第三者検証会社に第二新卒として入社後、派遣テスターとして業務をこなしつつTPIというテストプロセス改善技術について学んだ後、Web系SaaS企業でQAリードとして活動した。
現在はコーチングやシステム思考などの様々な専門性を複合し、「System Fixer」という新たな専門性を名付け、そのあり方を模索している。

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プロフィールイラスト:タスマニア・デビ男

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