はじめまして、開発9年生、QAコンサル2年生のせとです。
先日、UI/UX改善のお仕事にて初めてユーザビリティテストについて携わり、様々な気づきを得たので備忘の意味も込めてこの記事で内容の紹介を簡単にしたいと思います。
ユーザビリティとは
そもそもユーザビリティとはなんでしょうか?
感覚的には、サイトの使いやすさや見やすさなどがわかりやすいところかと思います。
ユーザビリティの定義についてはJIS Z 8521により定義され、主に人間工学的観点から「特定のユーザが特定の利用状況において,システム,製品又はサービスを利用する際に,効果,効率及び満足を伴って特定の目標を達成する度合い」として概念をまとめられています。
また、JIS Z 8520※1やJIS Z 8530※2が深く関連しており、この3規格を主として定義づけされています。
※1 JISさんぽ (01) JIS Z 8520:2022
「人間工学-人とシステムとのインタラクション-インタラクションの原則」|Sqripts
JISさんぽ (02) JIS Z 8522:2022
「人間工学-人とシステムとのインタラクション-情報提示の原則」|Sqripts
※2 JISZ8530:2019 人間工学-インタラクティブシステムの人間中心設計
も併せてご参照ください。
ユーザビリティテストでやったこと
今回AGESTにて実施したユーザビリティテストでは、2つのロールを用いてロールごとの視点から評価を行っていきました。
ひとつは、評価するシステムを詳しく把握している「専門家」、もうひとつは評価するシステムを初めて触る「ユーザー」です。
2つのロールをベースに、ユーザビリティテストでは大きく分けて2つのテストを実施しました。
- ヒューリスティック評価 ←本記事で書く内容
WEBサイトやソフトウェアなどのユーザビリティ(使い勝手や分かりやすさ)を評価する手法の一つで、制作者や専門家がガイドラインや自身の経験則などに照らして評価する方式※3
※3 ヒューリスティック評価(ヒューリスティック調査 / ヒューリスティック分析)とは – IT用語辞典 e-Words - ユーザーテスト
機器やソフトウェア、WEBサイトなどを利用者に実際に操作してみてもらうテスト※4
※4 ユーザーテスト(ユーザビリティテスト / 操作性テスト)とは – IT用語辞典 e-Words
今回はヒューリスティック評価について何をしたか、簡単に書きたいと思います。
ヒューリスティック評価
ヒューリスティック評価では、「専門家」としてWEBシステムの評価を行います。
今回の評価にあたり、以下2点のアイテムを用意し、WEBレイアウト、表示物、文章、コントラスト、リンク構成などのWEBサイトを構成する要素から、応答性、操作性、入力規則、制約などのシステムの評価を実施しました。
- JIS Z 8520に記載されているインタラクションの7原則を軸に作成したチェックシート
- 実際に使用するユーザーを想定した「ペルソナ」とWEBサイト閲覧時の状況を想定した「シナリオ」(ペルソナ/シナリオ法)
実際にWEBサイトを操作していく上でユーザビリティとして明確に低評価となる部分は以下の点がありました。
- 背景と文字色のコントラスト比の悪さ(コントラストスコアが低く、見えづらい)
- カルーセルメニューであることがわかりづらい
- コンテンツの案内が不足している
- ボタンが小さく押しづらい
- リンク構成が直感でわかりづらい
一方でペルソナになりきって操作をしていると、普段はあまり気にしないような細かい部分に気づくことが多かったと感じました。
- 文章の文字サイズ(周囲の文字やバナーなどに埋もれて相対的に見えづらい)
- ペルソナに対してWEBレイアウトが不親切(ハンバーガーメニューやナビゲーションウィンドウなどがわかりづらい)
- ペルソナ目線でメインコンテンツがどういうものか理解しづらい
いつもは気にならないような部分も、ペルソナ目線(老眼、弱視、操作不慣れ、IT初心者など)で考えたときに「これは使いづらいかも?」を注意深く拾って行く必要があったので、私の人生で一番WEBサイトと向き合った作業だったと思います。
これらの問題点に対して改善案をまとめてお客様へ報告し、改善すべき内容について認識していただきました。
改善案を上げるにあたり、まず意識したことは「現状の状態から整えられるレベルの改善から始められるもの」です。
今回ユーザビリティテストを求められたお客様は、「AGEST目線から迅速かつ的確な改善提案をしていただき、共により良いUI作りができることを期待しています。」と、多大なる期待をいただきましたので、それに応えるべく時間をかけずに改善できる且つ目に見えて変化がわかるところを重点的に挙げていきました。
上記に挙げた問題に対する改善案の提案例として、以下の内容があります。
- コントラスト比を改善し、文字の視認性を向上する。
- サイト全体の案内を見直し、動線やコンテンツの内容がわかるようなラベリングを意識する。
- レスポンシブルデザインを意識し、ボタンやリンクなどのサイズを見直す。
まとめ
ユーザビリティは、要件定義としては非機能要件にあたり、開発現場としては性能要件やセキュリティ要件などが重視され他の非機能要件より優先度が低くなりがちです。
しかし、ユーザビリティを軽視した場合に起こりうるリスクとして、使用感の悪さによるサイト離脱率の増加や、悪評によるアクセス率の低下を招きかねません。
そのような事態を防ぐべく、他の非機能テスト(性能テストや脆弱性診断等)と併せてユーザビリティテストを実施してWEBサイトの利便性評価を正しく行い、ユーザーにとって快適で使いやすいWEBサイトへ改善していくことについて考えていただけたら幸いです。
次回後編にて「ユーザーテスト」について書きたいと思います。
▼AGESTでは、ユーザビリティ診断についてのご相談も受け付けておりますので、ご気軽にお問い合わせください。
<出典>
- 三樹 弘之,JIS Z 8520 インタラクションの原則.J-Stage
- JIS Z 8521:2020 人間工学−人とシステムとのインタラクション− ユーザビリティの定義及び概念,日本産業規格
- JIS Z 8530:2019 人間工学−インタラクティブシステムの 人間中心設計,日本産業規格
- ペルソナ/シナリオ法を使ったユーザー中心のデザイン.株式会社イード.2009
- JISさんぽ (01) JIS Z 8520:2022「人間工学-人とシステムとのインタラクション-インタラクションの原則」|Sqripts
- JISさんぽ (02) JIS Z 8522:2022「人間工学-人とシステムとのインタラクション-情報提示の原則」|Sqripts
- ヒューリスティック評価(ヒューリスティック調査 / ヒューリスティック分析)とは – IT用語辞典 e-Words
- ユーザーテスト(ユーザビリティテスト / 操作性テスト)とは – IT用語辞典 e-Words