更新 2024.03.08

現代のソフトウェア開発では、競争力を維持し、顧客ニーズに迅速に対応するために、より短いスパンでのリリースが求められるようになりました。従来の開発手法ではこれが難しいとされており、こうした課題に対応するために注目されているのがDevOpsです。

この記事では、初級者エンジニア向けに、DevOpsの基本知識やアジャイル開発との違い、DevOpsのライフサイクルや導入方法まで、詳しく解説していきます。DevOpsに興味を持っている方や、導入するメリットを知りたい方は、ぜひこの記事を読んでみてください。

DevOpsとは?

DevOps(デブオプス)は、ソフトウェア開発における開発者を意味する(Development)と運用者を意味する(Operations)を組み合わせた造語です。DevOpsは、開発チームと運用チームが協力して、一つのチームとして、スピーディにソフトウェアを開発し、品質や生産効率を高めることを目的としています。

従来の開発チームと運用チームは、役割が異なるために対立することがありました。一般的に、プログラムを作成する開発チームと、システムの運用を担当する運用チームに分かれて作業を行います。開発チームの役割は、競合他社との競争力を得るため、システムに新しい機能を追加することであり、運用チームの役割は、安定したサービスを提供し続けることです。しかし、新しい機能を追加したい開発チームに対し、運用担当者はシステムの安定稼働を優先するため、機能追加に慎重になることがありました。

DevOpsはこのような問題を解決するために、開発チームと運用チームが協力して、一つのチームとして開発にのぞむための手段と言えます。開発と運用の間の壁が取り払われることで、効率的かつ効果的なソフトウェア開発と運用が実現されます。

DevOpsの基本

DevOpsは、開発チームと運用チームが協力してソフトウェアを作ることを目指すため、以下のような考え方を基本とします。

  • ソフトウェア開発ライフサイクルの自動化
  • 共同作業とコミュニケーションの向上
  • 継続的な改善と無駄の最小化
  • ユーザーニーズの重視とフィードバックループの最短化

これらの基本原則を理解した上で、開発・運用の各プロセスを自動化することで、効率的かつ効果的なソフトウェア開発と運用を実現し、継続的に改善することができます。

DevOpsが重要な理由

DevOpsの重要性は、開発と運用のコラボレーションを促進し、開発から運用までの一貫性を確保することにあります。また、自動化ツールを活用することで、作業の効率化と品質向上を実現できます。さらに、DevOpsは迅速なビジネス対応とイノベーションの促進にも寄与します。これらの理由から、DevOpsは現代のソフトウェア開発において、必要不可欠な要素です。

DevOpsとアジャイル開発の違い

DevOpsとアジャイル開発は、ともにソフトウェア開発において重要な手法ですが、それぞれのコンセプトは異なる側面があります。

アジャイル開発の特徴は以下のとおりで、どちらかというと開発に注力した考え方をしています。

  • 要件や仕様の変更を積極的に受け入れるようにしている
  • 設計・開発・リリースのような工程でできるだけわけずに、小さな機能ごとの開発を短い期間内で繰り返し行っていく
  • コミュニケーションを重要視し、自己組織化されたチーム

一方で、DevOpsは、先ほどDevOpsの基本で説明した4点の考え方を特徴としており、運用と開発のつなぎこみに注力する側面が強いです。

つまり、アジャイル開発はソフトウェア開発の具体的な手法であり、DevOpsはソフトウェア開発と運用の手法となります。

DevOpsとCI/CDとの違い

DevOpsとCI/CDは、ときどき混同されがちですが、それぞれ異なる概念であり、同時に密接な関係があります。
CI/CDはContinuous Integration(継続的インテグレーション)とContinuous Delivery(継続的デリバリー)の略称で、ソフトウェア開発における自動化の実践です。

CI/CDによる自動化は、DevOpsの考え方と相性が良く、効率的かつ効果的なソフトウェア開発と運用を実現するために、DevOpsアプローチの中でCI/CDが活用されることが多いです。つまり、CI/CDはDevOpsの実践において重要なツールとして機能し、両者は相互に補完しあう関係にあります。

DevOpsのライフサイクル

DevOpsはソフトウェア開発と運用に関わる考え方ですが、その具体的なプロセスはどうなっているでしょうか?DevOpsのライフサイクルには、計画・コーディング・ビルド・テスト・リリース・デプロイ・運用・モニタリングの8つのステップがあります。DevOpsのライフサイクルを正しく実施することで、開発チームと運用チームが協力し、より迅速かつ信頼性の高いソフトウェア開発を実現することができます。

以下に各ステップの概要を説明します。

  1. 計画(Plan)

DevOpsのライフサイクル最初のステップは計画です。このステップでは、開発チームと運用チームが協力して、ソフトウェアの要件定義や開発計画を策定します。計画ステップでは、開発と運用の間でのコミュニケーションが重要であり、双方が協力して開発計画を策定することが大切です。

  1. コード(Code)

計画ステップの次はコーディングステップです。このステップでは開発チームがプログラムのコードを開発し、ソースコード管理システムにコードを格納します。単体テスト、コードレビューなどの手順を経て、コードを完成させます。

  1. ビルド(Build)

コーディングステップが完了したら、次のステップはビルドです。ビルドステップでは、開発チームがソースコードをビルドして動作可能なアプリケーションを作成します。自動化ツールやクラウドサービスを活用して、ビルドを迅速かつ安全に行います。

  1. テスト(Test)

ビルドしたアプリケーションに不具合がないかを確認するステップです。ここでは、開発チームがアプリケーションをテストし、バグを特定して修正します。テストステップでは、自動テスト、手動テスト、セキュリティテストなどの手順を経て、ソフトウェアの品質を確認します。

  1. リリース(Release)

リリースステップでは、ソフトウェアの新しいバージョンが完成し、デプロイの準備が整います。リリース管理ツールを使用して、ソフトウェアの異なるバージョンを管理し、必要に応じてロールバックできるようにします。

  1. デプロイ(Deploy)

リリースされたアプリケーションやソフトウェアの新しいバージョンを実際の本番環境に配置します。デプロイの工程では、リリースされたバージョンのアプリケーションが実際のサーバー、クラウド環境、または他のインフラストラクチャに配置され、本番環境での動作が確認されます。

  1. 運用(Operate)

運用ステップは、ユーザーサポートやトラブルシューティング、システムメンテナンスを実施し、システムを安定稼働させます。

  1. モニタリング(Monitor)

モニタリングステップでは、運用チームがシステムの稼働状況を監視し、問題が発生した場合には、迅速に対応します。

DevOpsのライフサイクルは、開発と運用を連携させ、自動化することを重視したプロセスです。この方法により、ソフトウェア開発と運用のパフォーマンスと品質を向上させることができます。

DevOpsの開発手法

DevOpsの開発手法は、ソフトウェア開発プロセスにおいて、開発チームと運用チームが協力して、アプリケーションの開発・テスト・デプロイ・運用を継続的に改善するための手法です。

DevOpsの開発手法には、以下の項目があります。

  • 継続的インテグレーション
  • 継続的デリバリー
  • 継続的デプロイメント
  • コミュニケーションと共同作業
  • 継続的フィードバック

これらの手法を正しく理解し、導入することで、開発チームと運用チームがより密接に連携し、効率的かつスムーズなアプリケーションの開発・テスト・デプロイ・運用が可能になります。

継続的インテグレーション

継続インテグレーションは、コードの変更を共有リポジトリにマージした後、自動化されたビルドとテストを実行することで、問題を早期発見することができ、品質を向上させるための手法です。この手法により、開発者はコードの変更に伴う不具合を迅速に解決し、品質の高いソフトウェアを提供できるようになります。また、テストを自動化することで開発者は時間と手間を省くことができるので、より大規模なプロジェクトでも効率的に作業できます。

継続的デリバリー

続的デリバリーは、ソフトウェアのリリースプロセスを自動化し、常にリリース可能な状態を保つ手法です。この手法は、アプリケーションのリリースに必要な準備を自動化することでリリースの速度と安全性を向上させるだけでなく、品質の向上、コストの削減、チームメンバーのストレス軽減などのメリットもあります。

ただし、リリース自体は人が手動で実行する必要があるため、デプロイプロセスの設計と慎重なテストが必要です。

継続的デプロイメント

継続デプロイメントとは、ソフトウェア開発で変更を行うたびに、リポジトリから本番環境やテスト環境に自動的にリリースする手法です。この手法により、リリースのスピードを向上させることができます。継続的デプロイメントでは、ビルド、テスト、デプロイが自動化されているため、開発チームや運用チームの負担を軽減し、素早いリリースを実現できます。

継続的デプロイメントと継続的デリバリーの違いは、継続的デリバリーは本番環境にリリースする前に、人の承認作業が必要になる点です。一方、継続的デプロイメントでは変更が行われたらすぐに本番環境にリリースされるため、より迅速なリリースが可能です。

このように、継続的デプロイメントは、開発者がより頻繁に変更をリリースできるため、ユーザーのフィードバックをより早く反映することができます。

コミュニケーションと共同作業

DevOpsの成功には、運用チームと開発チームの共同作業が不可欠であり、そのためには組織内でのコミュニケーションが欠かせません。具体的には、チャットアプリやプロジェクト管理ツールなどのDevOpsツールを使用してリアルタイムで情報共有やコミュニケーションを促進することが重要です。例えば、SlackやMicrosoft Teamsなどのチャットアプリは、リアルタイムでチームメンバーと瞬時にコミュニケーションを取ることができ、問題点を素早く共有し、対応することができます。また、プロジェクト管理ツールの例として、Azure DevOpsやJiraなどがあり、タスクの進捗状況の共有やプロジェクト全体の進捗管理を行うことができます。これらのツールを活用することで、タスクの進捗状況や問題点の共有がスムーズになり、組織全体が目標に向かってより密接に連携できるようになります。

継続的フィードバック

継続的にフィードバックを得ることで、顧客のニーズに合わせた製品の改善が可能になります。具体的には、プロトタイプやモックアップのように開発の早期段階からフィードバックを獲得する方法や、A/Bテストやカナリヤリリースのように本番稼働中のシステムからフィードバックを獲得する方法があります。

このように、継続的にフィードバックを得ることで、開発チームは製品を改善し、より高品質な製品を提供できるようになることから、顧客との信頼関係を築くことができるようになります。

DevOpsを導入するメリット

DevOpsはソフトウェア開発と運用のパフォーマンスと品質を向上させることができますが、その具体的なメリットは何でしょうか?DevOpsのメリットは以下のようなものがあります。

開発スピードの向上

DevOpsの考え方やプラクティスを取り入れることにより、開発と運用のプロセスを効率化し、自動化を促進することができます。これにより、開発者はより迅速にアプリケーションを開発することが可能になります。また、DevOpsにより、開発者と運用者がより密接に連携できるため、開発者はより早い段階でフィードバックを受け取ることができます。

信頼性の向上

自動化されたテストやデプロイメントプロセスを通じて、システムの品質を向上させることができ、信頼性の高い製品を提供できます。

生産性の向上

DevOpsの導入により、開発者と運用者はより迅速にシステムを開発・デプロイすることができます。またリリースまでのプロセスを迅速化することで、ユーザーのフィードバックを早く反映させることができ、生産性を向上させることができます。

共同作業性の向上

DevOpsツールにより、開発チームと運用チームがより密接に連携することができるので、コミュニケーションの障壁を取り除くことができます。またチーム全体でシステムの状態を把握できるため、共同作業性を向上させることができます。

拡張性の向上

DevOpsの考え方では、インフラストラクチャもアプリケーションコードと同様にコードで管理することが推奨されます。この手法をInfrastructure as Codeと呼び、インフラをコードで定義することで、標準化されたパターンでリリース、更新、複製が可能です。これにより、インフラと開発プロセスを統合し、システム全体をより効率的に管理できます。

セキュリティ面の向上

DevOpsでは、開発と運用のプロセスを効率化し、自動化を促進することが重視されます。この自動化の一環として、セキュリティポリシーに基づいた自動チェックが実装されることが望ましいです。これにより、継続的にビルド・テストされたコードは、セキュリティポリシーに基づいて自動的にチェックされ、安全なソフトウェアを迅速に提供できるようになります。

DevOpsモデルの導入方法

このように、DevOpsはソフトウェア開発と運用に多くのメリットをもたらしますが、導入には、いくつかの障壁があります。

DevOps導入の障壁

DevOps導入の障壁として、以下の2つが挙げられます。

企業文化の変革の必要性

DevOpsは、開発チームと運用チームが協力してソフトウェアの開発から運用までをスムーズに行うことを目指す仕組みです。しかし従来のシステム開発方針では、開発チームと運用チームは別々に働き、それぞれに異なる目標や評価基準が存在していました。そのため、DevOpsを導入する際には、両者の役割や責任を明確にし、コミュニケーションや協調性を高めるための企業文化の変革が必要になります。

ツールの選定

DevOpsを実現するためには、適切なツールを選定することが重要です。しかし、数多くのツールが存在するため、どれを選ぶべきか判断することは容易ではありません。

実現するためのツール

DevOpsを実現するためには、AzureやAWSなどのクラウドプラットフォーム、CI/CDツール、コンテナ管理ツールなどが必要です。

クラウドプラットフォーム

クラウドプラットフォームを利用すると、インフラの設定や管理を自動化し、環境を柔軟にスケールアップ・スケールダウンできます。AzureやAWSはその代表例です。

  • Azure

Microsoftによる提供で、Windowsとの親和性が高い点が特徴です。AIやIoTなどの先進的な技術にも対応しています。

  • AWS

Amazonによる提供で、最も普及しているクラウドプラットフォームの一つです。サーバーレスアーキテクチャやコンテナ技術、マイクロサービスなど、最新の技術にも対応しています。

CI/CDツール

CI/CDツールには、コードをビルド・テストしてリリースまでの自動化を支援する機能があり、Azure DevOpsやAWS CodePipelineが代表的なツールとして知られています。

  • Azure DevOps

Azureクラウド上で提供されます。コードの管理からビルド、テスト、リリースまでの一連のプロセスを一元管理できます。また、GitHubやJenkinsなどの外部ツールとの連携も可能です。

  • AWS CodePipeline

AWSクラウド上で提供されるCI/CDツールです。このサービスもビルド、テスト、リリースなどのプロセスを自動化できます。AWSの各種サービスとの連携が容易です。

コンテナ管理ツール

DevOpsにおいては、コンテナ技術を活用することが多いため、コンテナ管理ツールも重要な役割を担っています。コンテナのデプロイや管理、スケーリングなどを支援する機能があります。代表的なツールとして、Azure Kubernetes ServiceやAWS Elastic Kubernetes Serviceが挙げられます。

  • Azure Kubernetes Service

Azure上で提供されるKubernetesベースのコンテナ管理ツールで、Kubernetesクラスタの作成、管理、スケーリングを自動化できます。Azureで稼働するアプリケーションをKubernetes上で実行できるため、高い可用性や拡張性を実現できます。

  • AWS Elastic Kubernetes Service

AWS上で提供されるKubernetesベースのコンテナ管理ツールで、コンテナの管理、スケーリング、自動復旧などを支援します。Amazon EC2上でKubernetesクラスタを構築するため、EC2の自動スケーリングやロードバランシングなど、AWSの各種サービスとの連携が容易になります。

これらのツールは、DevOpsの実践をサポートするものであり、組織やプロジェクトの要件に応じて選択・組み合わせることが可能です。また、これらのツールを効果的に活用することで、開発プロセスの自動化や効率化、コラボレーションの強化が実現できます。ただし、ツール自体がDevOpsを実現するわけではなく、適切な文化やプロセスが整備された上でツールを使うことで、DevOpsの恩恵を最大限に活用できることを理解しておくことが重要です。

Four Keys」の4つの指標

DevOpsの実践においては、プロジェクトの進捗やチームの効率化を評価する為の指標が不可欠です。そのための指標として、GoogleのDevOps Research And Assessmentチームが提唱した「Four Keys」があります。この指標を使用することで、ソフトウェア開発チームは、自分たちのパフォーマンス評価し、改善することができます。

Four Keysは、以下の4つの指標から構成されています。

  • デプロイ頻度
  • 変更リードタイム
  • 変更障害率
  • 平均修復時間

これらの指標を定期的に測定することで、開発チームは、ソフトウェアの品質を向上させるために必要な改善点を把握できます。自身のパフォーマンスを客観的に評価し、改善することができます。

以下に、4つの指標について解説します。

デプロイ頻度

デプロイ頻度とは、開発チームが新機能や修正をリリースする頻度を示します。デプロイ頻度が高いほど、開発チームが効率的にリリースを行っていることが示されます。

変更リードタイム

変更リードタイムは、コードの変更から、本番環境でリリースされるまでの時間を示します。短い変更リードタイムは、新機能やバグ修正に迅速に対応できることを示します。

変更障害率

変更障害率とは、デプロイが原因で本番環境で障害が発生する割合を指します。変更障害率が低いことは、開発チームが信頼性の高いソフトウェアを提供できていることを示します。

平均修復時間

平均修復時間は、障害が発生してから修復するまでにかかる時間を指します。平均修復時間を短縮することで、障害を早期発見し、迅速に対応できるようになります。

Four Keyの指標は、開発チームのパフォーマンスを測定するものであり、改善に役立ちます。これらの指標を把握することで、開発チームは自身のパフォーマンスを客観的に評価し、継続的に改善を繰り返すことで、より高品質なソフトウェアを提供することができます。

まとめ

本記事では、DevOpsの基本的な概念や導入メリットについて解説しました。DevOpsは、開発チームと運用チームのコラボレーションを促進し、より効率的な開発が可能になる手法であり、今後ますます重要性が高まることが予想されます。

この記事が、エンジニアの皆さんの今後のソフトウェア開発をよりよいものにする助けになれば幸いです。

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