脆弱性診断とは

脆弱性診断とは、情報システムに存在するセキュリティホール(脆弱性)を見つけ出し、それを評価・報告する作業のことです。これにより、組織はそのシステムの防御策を強化し、潜在的な攻撃から身を守ることができます。

脆弱性診断の目的

脆弱性診断の目的は、セキュリティの脆弱性を発見し、そのリスクを把握することです。さらに、その情報を基にシステムのセキュリティ対策を計画・実行することが可能になります。

1. 脆弱性の発見

システムの脆弱性を特定することが、診断の主な目的です。脆弱性とは、悪意のある攻撃者がシステムを侵害したり情報を盗んだりするための入り口となる可能性がある部分です。これに対する防御策が不十分な場合、企業は機密データの漏洩やサービスの中断といった重大なリスクにさらされます。

2. リスクの評価

診断が明らかにする脆弱性それぞれには、それぞれ異なるリスクレベルがあります。そのため、診断の一環として重大性の評価も行われます。脆弱性の影響範囲や攻撃可能性などを考慮し、リスクを高、中、低のようにレベルに分類します。これにより、企業は最も緊急性の高い問題から対処することができます。

3. 対策計画の策定

最終的に、脆弱性診断は企業が自身のシステムにどのような対策を施すべきかを明確にするという目的があります。この対策は、短期的なもの(例 : パッチの適用)から長期的なもの(例 : セキュリティポリシーの見直し)まで幅広く、評価されたリスクレベルに応じて優先されます。

以上が脆弱性診断の主な目的となります。個々の脆弱性を発見し、リスクを評価・ランク付けすることで、企業は情報システムのセキュリティ強化に取り組むための具体的な手段を見つけることができます。

脆弱性診断の必要性

今日の情報システムは複雑で変化に富み、絶えず新たな脆弱性が発見されています。そのため、一度設定した防御策だけ頼りにするのではなく、定期的な脆弱性診断を行い、システムの最新の状態を確認することが求められます。

デジタルテクノロジーもまた日進月歩で進化し続けており、新しいハードウェアやソフトウェアは常に登場しています。これら新しいテクノロジーは新たな脆弱性をもたらす可能性があります。そのため、企業は定期的に診断を行って新たな情報システムの脆弱性を特定し、これらの新しいリスクを管理する必要があります。

そのうえ、サイバー攻撃者は新しい攻撃手法を開発するため、絶えず新たな脆弱性を探し求めています。一度設定した防御策だけに頼っていると、新しい攻撃手法によって企業のデータやシステムが侵害されるリスクがあります。脆弱性診断を定期的に行うことで、新たに生まれた脆弱性を把握し、適切な防御策を迅速に施すことが可能になります。

また、企業が業務で使用する情報システムは、個人情報保護法や金融業界の規制など、様々な法規制を遵守しなければなりません。これらの規制は企業が適切なセキュリティ対策を講じることを求めており、脆弱性診断はその一部となる場合があります。

つまり、脆弱性診断はテクノロジーの変化と共に進化するサイバー犯罪から身を守り、法規制を遵守するために不可欠な活動です。企業は定期的な脆弱性診断を行ってシステムの最新の状態を確認し、必要なセキュリティ対策を講じることが求められます。

ペネトレーションテストとの違い

脆弱性診断とペネトレーションテストは似ていますが、違いは次の通りです。脆弱性診断は情報システムの脆弱性を探すことに重きを置きますが、ペネトレーションテストはその脆弱性を利用して実際に侵入を試みることに重きを置きます。つまり、ペネトレーションテストは脆弱性診断を一歩進めたものと言えます。

脆弱性診断

目的:情報システムに存在する脆弱性を見つけ出すこと
結果:脆弱性リスト、その影響度、修正方法の推奨など

ペネトレーションテスト

目的:脆弱性を利用してシステムを侵害することが可能なのかを確認すること
結果:システムに対する実際の攻撃の可能性、影響度、侵害した後のシステムの状況など

つまり、脆弱性診断はあくまで情報システムの脆弱性の存在と可能性に焦点を当てたものであり、ペネトレーションテストはさらに深堀し、実際の攻撃がどの程度の影響を与えるかを評価します。

これにより、企業は既知及び未知の脆弱性に対する真のリスクを理解し、より適切な防御策と対応策を選択できます。

脆弱性診断の主な種類

脆弱性診断にはいくつかの種類があります。主なものは次の2つです。

Webアプリケーション診断

Webアプリケーション診断は、その複雑なロジックと数多くのユーザーインターフェースにより、特に脆弱性が発生しがちなWebアプリケーションが対象となります。この手法の主な特徴は以下の通りです。

テストスコープ

Webアプリケーション診断は、Webアプリケーション全体におけるデータ入力、データ処理、そしてデータ出力で問題が生じる可能性があるすべてのポイントをチェックし、脆弱性の有無を診断します。

様々な脆弱性の探索

インジェクション攻撃、クロスサイトスクリプティング(XSS)、クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)、不適切な認証・認可などの広範な脆弱性が検証対象となります。これらの脆弱性は情報流出、不正なシステム操作、サービス停止など重要なリスクを引き起こします。

プラットフォーム診断

プラットフォーム診断は、オペレーティングシステム、ミドルウェア、ネットワークなど基盤となるシステム上で動作する全体の環境を対象に行います。重要な特性は次の通りです。

複数のプラットフォームを対象とする

プラットフォーム診断では主にOS(Windows、Linux、macOS等)、ミドルウェア(Webサーバー、データベース管理システム等)、ネットワーク機器(ルーターやスイッチ)などを対象とします。これらの各コンポーネントが正しく構成されているか、また更新漏れなどによる脆弱性がないかを確認します。

様々な脆弱性の探索

プラットフォーム診断は、不適切な設定、未パッチのソフトウェア、弱い認証メカニズムなど、幅広い種類の脆弱性を探します。これらの脆弱性は、盗聴、改ざん、システム停止といった、システム全体に影響を及ぼす可能性のあるリスクを引き起こします。

脆弱性対策の推奨

脆弱性が発見されれば、システム管理者への報告と併せて、適切な修正策や対処法を推奨します。これによりシステムやネットワークのセキュリティを全体的に向上させることが可能になります。

脆弱性診断の方法

脆弱性診断には2つの主な方法があります。

手動診断

手動診断は、専門家が直接システムを調査し、細かくチェックする方法です。これにより、自動診断では見つけ出せない脆弱性を発見することができます。

人間の専門家が直接システムを調べることで、その直感や経験が活きる点が大きな利点となります。彼らはパターンを理解し、異常な挙動を感知し、状況に応じて戦略を調整する能力を持っています。これにより、自動化ツールだけでは見落とすような脆弱性やリスクを見つけ出すことができます。

この特性から、手動診断は、システムやアプリケーションの深い理解を必要とする複雑なシナリオや、脅威ランドスケープが急速に変化している状況において、特に効果的な方法であると言えます。

ツール診断

ツール診断は自動化された診断方法で、脆弱性診断ツールを使用して危険性をスキャンします。これにより、大規模システムのような広範囲の環境でも効率的に脆弱性を検出することが可能です。ただし、ツールだけに依存すると一部の脆弱性を見逃す可能性もあるため、手動診断と併用することが推奨されます。これらの特性を以下に示します。

広範囲のシステムに対する診断

ツール診断は、大規模な環境でも効率的に診断を行うことが可能です。これは、自動化ツールが一度に多くのシステムをスキャンして脆弱性を特定するのに適しているからです。

高速・効率的な脆弱性スキャン

一般的に、自動化ツールは手動診断よりも速く結果を提供します。ツールは既知の脆弱性に対するシグネチャを活用し、それらを効率的に検出します。このため、時間の制約がある場合や頻繁に診断を実施する必要がある場合には特に有効です。

標準化されたレポーティング

自動化ツールは一般的に、組織規模の問題を容易に追跡、比較、管理できる標準化されたリポートを提供します。これは、トレンド分析や優先事項の特定、プログレスのトラッキングに有効です。

ツール依存の欠点

自動化ツールは多くの効果的な診断を提供できますが、それだけに依存すると問題が発生する可能性があります。自動ツールは主に既知の脆弱性に対して高い効率を発揮しますが、新しいものや複雑な攻撃手法に対するディテクション能力は限定的です。また、誤陽性(false positives)の結果を出す可能性もあります。

以上のように、ツール診断は適切に使用すれば非常に強力な手法となりますが、その限界を理解し、必要に応じて手動診断など他の方法と組み合わせることが重要です。

脆弱性診断の進め方

脆弱性診断を進める上での具体的な各ステップについて詳しく説明します。

以下のプロセスを通じて、継続的にシステムのセキュリティ状況を確認し、適切な対策を行って脆弱性を減らすことが目指されます。

1.計画

このフェーズでは、診断の目的と範囲を明確に定義します。対象とするシステムやアプリケーション、診断テストの手法(手動診断、ツール診断)および診断の日程などを決定します。全てのステークホルダーに計画を伝えることで、診断を円滑に進めるための協力を得ることができます。

2.診断

目的と範囲に基づき、具体的な診断作業を開始します。手動方法であれば、専門家の知識と経験を活用して、ネットワークやシステムのセットアップ、設定、動作を詳細に調査します。ツール診断では、選定した自動化ツールを使用します。これらのツールは、大量の情報を迅速に分析し、可能な脆弱性を特定します。

3.解析・評価

診断により見つけた可能な脆弱性を詳細に分析し評価します。この段階では、各脆弱性の重大性、攻撃が発生した場合の影響の程度、実際の脅威に対する評価などを行います。評価は企業のビジネス目標やリスク許容度により差異が出る場合があります。

4.報告

各脆弱性について詳細かつわかりやすい報告書を作成します。各脆弱性の説明、その重大性、推奨される対策などを明記します。報告はハイレベルな管理者から技術的な詳細を必要とするIT部門まで、幅広い聴衆に適した形で提示する必要があります。

5.対策

報告書で指定された対策を実施します。これは、ソフトウェアのパッチ適用、システム設定の改善、新しいセキュリティポリシーの導入など、見つけられた脆弱性によります。対策実施後は、再診断を行い、効果を確認します。

脆弱性診断サービスの活用と選定ポイント

脆弱性診断サービスの選定ポイントを下記に列挙します。これらのポイントを考慮することで、企業のニーズとリスク許容度に合った最適な脆弱性診断サービスを選択することが可能になります。

実績

サービスプロバイダの経験と成功事例は、その能力を判断する基本的な指標です。プロバイダが過去にどのようなプロジェクトを成功させてきたか、それらのプロジェクトがあなたの業界や要件とどう関連しているかを確認します。そのうえで、具体的な事例や参考情報、お客様のフィードバックを求めると良いでしょう。

手法

診断手法が手動診断とツール診断の両方をカバーしているかどうかを確認します。ツール診断は広範なスキャンを高速に行うため有効ですが、新たな脅威や特定のコンテキストに対応するためには手動診断の方が適しています。そのため、手動診断とツール診断のバランスが取れたサービスを選ぶと良いでしょう。

報告

診断サービスから提供される報告内容を考慮します。良い報告書は脆弱性の詳細とその影響をわかりやすく説明するだけでなく、それに対する具体的な対策の提案も含むべきです。そして、その報告が技術的な人々だけでなく、非技術的なステークホルダーに対しても理解しやすい形であることが重要です。

対応

診断後のフォローアップとサポートが提供されるかどうかを確認します。良いサービスプロバイダは、脆弱性の修正と追加的な診断に関するサポートを提供し、問題を完全に解決するための助けとなるはずです。また、継続的なセキュリティ管理と改善に対するアドバイスやサポートも提供する場合があります。

参考:サイバーセキュリティ診断(株式会社AGEST)

まとめ

セキュリティ対策は、情報システムが脆弱性に由来するリスクから身を守るために必要不可欠です。定期的な脆弱性診断を通じて脆弱性を把握し、優先順位をつけて対応することが重要です。そして、その診断は必ずしも自分たちだけで行わなければならないというわけではありません。専門的な知識が必要な場合や、内部リソースが不足している場合は、外部の脆弱性診断サービスの活用も有効です。

外部サービスの選定の際には、こちらも参考にしてみてください。

<参考サイト・記事>

ミツモル | 法人向けサービスの見積もりはミツモルへ!!

脆弱性検査(診断)とは?重要性と手法、導入と促進方法について

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