ペネトレーションテストとは?
ペネトレーションテスト(侵入テスト)とは、情報システムのセキュリティ対策を評価するために行われるテストの一つです。実際に攻撃者となって脆弱性を利用しシステムに侵入することで、潜在的なリスクを具体的に把握します。これによりセキュリティレベルの客観的な評価や改善につながります。
ペネトレーションテストの目的
ペネトレーションテストの主な目的は、セキュリティ対策の妥当性や実際の攻撃を模擬することで、理論上では考えにくいセキュリティリスクを特定します。
主な実施目的は下記の通りです。
リアルな攻撃シナリオでの評価
システムの評価を実際の攻撃シナリオに基づいて行うことが、ペネトレーションテストの一つの大きな目的です。実際の攻撃者がどのようにシステムを突破しようとするのか、その視点からセキュリティの有効性を検証します。これにより、実際のセキュリティ事情を反映した具体的な改善策を立案できます。
複数の脆弱性を組み合わせた攻撃の評価
一つの脆弱性だけでなく、複数の点を組み合わせて攻撃される可能性もあります。ペネトレーションテストでは、個々の脆弱性を単体で評価するだけでなく、それらを一組にして攻撃された場合のリスク評価も行います。
システム管理者の反応評価
システムに不正侵入しようとする活動を検知して、システム管理者が該当する活動に適切に対応できるかどうかを評価するためにも、ペネトレーションテストは必要です。これにより、組織全体のインシデント対応能力を向上させることができます。
法的・規制上の要求への対応
特定の業界や地域では、サイバーセキュリティ法やグローバルな規制に従うために、ペネトレーションテストが求められる場合があります。それらの要求に準拠するためにも、ペネトレーションテストの実施は不可欠です。
以上のように、ペネトレーションテストの目的は広範で包括的であり、その中核には、システムと組織全体のセキュリティポスチャを強化するという役割があります。
ペネトレーションテストの必要性
情報システムの脆弱性は、システムの設計・開発・運用の各ステージで生まれる可能性があります。この脆弱性が悪意ある第三者に利用されると、重要な情報が盗まれたり、システムがダウンしたりすることにつながります。ペネトレーションテストにより、これらのリスクを把握することができます。
いかなるセキュリティシステムでも、理論的なテストやモデリングだけでは十分な評価はできません。ペネトレーションテストでは、実際の攻撃シナリオに沿った試験を行うことで、セキュリティの懸念点が具体的に可視化され、セキュリティ対策の優先順位が明確になります。
また、システム管理者やデベロッパーが予測しきれない視点からの攻撃も含めて、システムへの攻撃耐性を評価できます。たとえば、設計段階で想定していなかった使われ方をするユーザーや、システム全体としては見えにくい特定部分への攻撃など、様々な角度からの評価が可能になります。
一方で、企業のITスタッフやエンドユーザーが、どのようにしてシステムが攻撃される可能性があるのかを理解する機会ともなります。これにより、意識向上を目指した取り組みとして、教育やトレーニングの一部として取り入れることができます。
多くの場合、特定の規模や業種の企業は、定期的なセキュリティ評価を行うことが法律により義務付けられています。また、ペネトレーションテストは顧客の個人情報やビジネスの秘密を保護するための信用度の一部としても見なされます。
以上のように、ペネトレーションテストは攻撃をされた場合のリスク、攻撃者の視点の理解、スタッフの意識向上、法令遵守と信用維持を目指して行うのが理想的です。
脆弱性診断との違い
脆弱性診断は、システムやアプリケーションが持っている可能性のある脆弱性を発見するための評価です。主にエンジニアによる手動のテストや自動化されたツールを使用した脆弱性をスキャンによって、脆弱性がシステムに存在するかどうかを調査します。
一方、ペネトレーションテストは、見つけた脆弱性を実際に利用してみることで、その影響を評価します。つまり、実際に攻撃を模擬してシステムに侵入を試み、どの程度のダメージを与え得るかを評価します。
そのため、脆弱性診断とペネトレーションテストは、目的も手法も異なります。前者はシステムやアプリケーションの脆弱性を発見することに重きを置く一方で、後者はそれらの脆弱性が実際に悪用された場合の影響を評価します。
以上のように、脆弱性診断とペネトレーションテストは、セキュリティ評価の異なる側面を補完するもので、どちらも有効なセキュリティ対策の一部として扱われます。これらを組み合わせることで、システムの脆弱性を発見し、それが実際に攻撃者に利用された場合のリスクを評価することが可能になります。
ペネトレーションテストの進め方
一般的なペネトレーションテストの進め方は下記の通りです。
1. プロジェクトの範囲定義(Scoping)
まず初めに、テストの目的、スコープ、時間割、テスト対象、そしてどのような方法を用いて攻撃を模倣するかなどを定義します。ここで取り決められる内容は、組織のセキュリティポリシーや要件、そして予算によって異なる場合があります。
目的
何を達成するためにテストするかを明確にします。
スコープ
テストの対象となるシステム、ネットワーク、またはアプリケーションを定義します。
時間割
テストの種類やスコープに応じて、テストの期間を設定します。
テスト対象
検証したい特定の脆弱性や関心項目を明示します。
攻撃方法
使用するツールや手法、そしてどの程度まで侵入を試みるかなどを定義します。
2. 情報収集(Reconnaissance)
次に、テストの対象について情報を収集します。これには公開情報(例えば、WHOISデータやDNSレコード)や非公開情報(システム設定やネットワーク構造等)の両方が含まれます。
3. 脆弱性探索(Vulnerability Assessment)
収集した情報を基に、システムやアプリケーションの脆弱性を探索します。これには自動化ツールや手動テクニックの両方を使用します。
4. 侵入試験(Exploitation)
次に、発見した脆弱性を利用して実際にシステムへの侵入を試みます。これがペネトレーションテストの主要な部分であり、システムがどの程度まで攻撃耐性があるのかを評価します。
5. 脆弱性利用(Post-Exploitation)
侵入成功後は、どの程度の被害が想定されるかを評価します。例えば、機密情報へのアクセスや、追加的なシステム控えへの侵入などが考えられます。
6. 報告(Reporting)
最後に、テストの結果を詳細に報告します。これには、見つかった脆弱性、それらがどの程度重要か、そしてそれらを修正するための推奨料が含まれます。
ペネトレーションテストサービスの活用と選定ポイント
ペネトレーションテストは専門的な知識と技術を必要とし、しかも定期的に行うべきであるため、手間と時間がかかります。そのため、専門のサービスを活用することが推奨されています。
ペネトレーションテストサービスを選定する際のポイントとしては、まず、サービス提供者が持つ専門的な知識と経験を確認してください。さらに、提供されるレポートの質や、テスト後のサポートも重要な要素です。テスト結果を基にした改善策の指導や再テストなどを含む継続的なサポートがあれば、セキュリティ対策の品質を高められます。
ペネトレーションテストサービスの活用
ペネトレーションテストサービスは有効なセキュリティ対策の一つであり、専門的な知識と技術が必要なため、企業にとっては外部のプロフェッショナルサービスに委託することが一般的です。以下にその主な理由を示します。
専門的なスキル
ペネトレーションテスターは、最新の脅威と攻撃技術を理解し、それらに対抗するための専門的な技術と知識を持っています。
客観性
外部のサービス提供者は、内部のエンジニアや開発者が見落とす可能性のある問題を特定できます。
時間とコストの節約
サービスを利用することで、企業は自身のリソースを他の重要なタスクに集中することができます。
ペネトレーションテストサービスの選定ポイント
ペネトレーションテストサービスを選定する際には、次の要素に注意を払うと良いです。
能力と経験
提供者はどの程度テストの経験があり、どのような方法でテストを実施するか?
報告
テストの結果はどのように報告され、それは明確で理解しやすいか?
どのような改善策が提案されるか?
サービス後のサポート
テスト終了後にもサポートを提供してくれるか?
具体的には、レポートの解説や必要に応じてフォローアップのサポートがあるか?
コスト
サービスのコストは理解しやすく、それが予算内に収まるか?
ビジネスの成長やニーズの変化に応じてスケーリングするオプションがあるか?
以上の要素を踏まえて、ペネトレーションテストサービスを選定すると良いでしょう。また、選定したサービスが企業のセキュリティ目標と合致していることを確認します。
参考:脅威/シナリオベース・ペネトレーションテスト(株式会社AGEST)
まとめ
ペネトレーションテストは、情報システムのセキュリティ対策を検証するための重要なテストです。脆弱性診断がシステムの弱点を示すのに対し、ペネトレーションテストは実際の攻撃の視点から、現実の脅威に対する耐性を試すものです。このようなテストを定期的に行うことで、システムのセキュリティレベルを維持し、改善することができます。それが手間や時間がかかる作業であっても、ペネトレーションテストサービスを活用することで、一歩進んだセキュリティ対策を行うことが可能です。