こんにちは、セキュリティエンジニアの河村です。

この度初めてsqriptsに記事を執筆することになりました。数回にわたって技術書を紹介していく予定です。

今回は技術書を読むための本、『「技術書」の読書術』の書評を行います。

本の概要

『「技術書」の読書術』は、数々の技術書をヒットさせているIPUSIRON氏と、情報系の数学を研究している増井氏による、技術書や一般書を読む際のインプットとアウトプットの方法や心がけを記載した本です。二人とも圧倒的な数の書物を読む読書の達人であり、本を沢山読む人はもちろん、本に対して苦手意識がある人にも役に立つ技術書と向き合うにあたっての一般論が記載されています。

内容の要約|各章の解説

本書は「選び方」「読み方」「情報発信&共有」という章に分かれています。それぞれについて簡単に解説します。

本の選び方

書店の特徴

本を選ぶ方法の前に本の取得方法の一つの書店の特徴についてお話しします。書店ごとに特徴が当然あり、それを理解することでよりニーズにあった書籍と出会いやすい、というのは納得頂けるかと思います。私もこの企画のために技術書を三冊ほど買ったのですが、自宅から近い中堅都市の本屋では満足がいくレベルの技術書が見つからず、結局交通の要所となってる池袋のジュンク堂で買いました。需要と供給の関係から当然このような場所に大規模かつ専門的な書店は集約されます。池袋、新宿、東京駅などの本屋は規模も大きく、専門分野に特化した強さもあります。

これらの書店の店員は各分野の専門家たちとやりとりをしてるため、彼(女)らとコミュニケーションを取ることで新鮮な情報を収集することも出来ます。

この度書籍を買ったジュンク堂池袋本店は本書にも記載されていた、日本有数の「技術書のメッカ」である

書籍のレベル感

本を選ぶ際の注意点として、書籍のレベル感について知っておくと良いでしょう。技術書は大きく分けて、「概要を理解したい層」(PM、システム開発の発注者など)、「実装の手順を知りたい層」(プログラマなど)、「理論を理解したい層」(理系の大学生など)等に区分されており、ターゲットの読者層に応じて書籍が重点を置いてる内容が異なってきます。このようなレベル感の違いを知っておけば、例えば「実践的なコードを書けるようになりたいのに名著という評判であることを理由に『概要を理解したい層』向けの本を選んだ結果、知りたい内容が記載されていなかった」といった失敗は避けることができます。

本を選ぶときに参考にすべきポイント

  • 評判
  • 著者のプロフィール
  • 索引
  • 出版者

索引、出版者などの観点は本を読み慣れてない人だとあまり着目しないことも多いと思います。

本のレビューサイトとの付き合い方

現代では書籍を探す際、レビューサイトを見ることが多いと思います。レビューの評価だけではなく、レビューを書いている人のレベル感にも注意するといいです。

図書館の活用

図書館はその性質上、古い本が多いですが、本屋よりも置いてある本にバイアスがかかってないと言えます。また、なんと言っても無料である点は嬉しいです。絶版本などが多く置いてあることから、技術の歴史、普遍的な基礎技術などについて調べる場合は、非常に有用です。

サブスクサービス

本のサブスクサービスを活用することで、普段なら目を通さない雑誌などにも触れることが増え、視野が広がる効果を狙えます。また、O’Reilly online learningやPacktなどの英語圏のサブスクサービスには非常に良質な技術書も含まれています。

本の読み方

この章では二人の著者が実践してる読み方が記載されています。紹介された読み方の中には中々エキセントリックなものもあります。その中から、私が参考にしてみようと思ったものを中心に紹介します。

電子書籍

検索機能が優秀で、またデジタルデータなのでかさばりません。その代わりに1ページ以上ページをめくることが困難であるといえます。

紙媒体

電子書籍より機能が限定されるため、より強い没入感があると言えます。当然所有感も満たされます。当然場所を占拠します。

プログラミング書の読み方

プログラミングは目的では無く、手段であるということが重要です。本に記載されている本を無条件に信じず、常に手を動かすことを念頭に置くべしです。

数学書の読み方

  • 学校での数学と、ビジネスでの数学が求めるものの違いを意識することが重要です
    • 学校では理論重視、また正解がある問題
    • ビジネスでは実践重視、答えがあるとは限らない

再読すること

再読する際には、以前とは違う感想を持ちます。そこから自らの、「価値観の変化」、「知識・スキルの向上」等を認識することができます。

場所を問わない読書

迷惑をかけずに、安全さえ確保できたら、読書はいつどこで行っても構いません。若干極端な例だと思いましたが、食事中、エスカレーターに乗ってる間、旅行中、入浴中などの読書について紹介されていました。本を読む情熱さえあれば、ほとんどどこでも本は読めます。

私自身、個人的に電車の旅が好きなのですが、それの大きな理由として、読書に専念できるからというのはあります。あえて鈍行列車に乗り、積ん読していた本を一気に読むことを定期的に行っています。電子書籍を用いればかさばる心配もいりません。

夏期と冬期に入手できる青春18切符と読書の相性は抜群です

媒体を問わない

紙媒体、電子書籍はもちろん、オーディオブックなども今は充実してきています。これらを活用することで隙間時間にインプットを行えたりします。ドライブ中などにもインプットが行えます。

私自身はスマホを持つことも困難なレベルの満員電車ではオーディオブックで本を聞くことをよく行います。

オーディオブックの最大手、Audible

分冊化読書法

本を物理的に裁断し、読みたい箇所だけを持ち運ぶ読書法です。当然本を破壊することになるので、お手軽な読書法とはいえません。ですが、特に試験勉強など、覚えることが中心となる読書の際には効果的といえます。

私自身、大学受験のときは1000ページ近くある数学の参考書でこれを行っていました。次また何か資格試験を受ける際にやってみようと思っています。

時間制限読書法

制限時間を設けて一定の箇所まで読書を行う方法です。この本では90分単位が薦められています。

似た概念として、「ポモドーロテクニック」があげられます。

このような読書法を行う場合、適度に本を読み飛ばす技術があるといいです。

これを行う際、集中力のさまたげとなるスマホ、パソコンなどとは距離を置く方がいいです。極力メモも取らない方がいいです。私自身、この読み方を行う際、付箋を活用して重要な箇所、SNSで共有したい箇所などをマークし、制限時間後にそれらをチェックするように心がけています。

マーキング読書法

読書の際に随時内容に応じて適当なマークを付ける読書法のことです。こうすることで、考えが整理されたり、集中力が向上したりなどのメリットがあると言えます。また、読み返した際に過去の自分が選定した箇所を見ることで、自分の成長を実感出来るなどのメリットもあります。当然本を汚すことにはなります。

私は今、Post-itの特定の色を用いてマーキングするようにしています。特定の色とは赤、橙、黄、青なのですが、なぜこれらの色かと言いますと、これはKindleで用いれるマーカーの色と同じだからです。また、Post-itの場合、綺麗に剥がせるので基本的に本を汚しません。参考までに私の色の使い方を共有します。

  • 橙:技術的な内容、キーワード(覚えたい用語など)
  • 赤:SNSでシェアしたい内容 ⇒ 読書中にSNSでシェアすると注意力が散漫になるため、マーキングしてからシェアするようにしている
  • 青:章全体が参考になりそうな場合
  • 黄色:気になる単語、キーワード(橙ほど重要ではない)
このように付箋を沢山貼ってます
Kindleでも同様にマーキングできます

PDFの読書

PDFに記載された文書を読む際、iPadなどにはGoodNotes等優れたアプリがあることが記載されています。私はNoteShelf2というアプリを用いていますが、これらのアプリはApplePencilで直接書き込むことが出来たりとハイスペックです。WindowsやAndroidにも優れたアプリはたくさんあるのでこれらを活用することで読書のインプットアウトプットの質を上げることは重要なことだと言えます。

英文の読書

日本人が英語の文献を効率的に読む際、翻訳ソフトはほとんど必須と言えます。DeepL等を上手に活用することでPackt等の良質な英語の技術書をかなりストレスを軽減した上で読めます。

私自身はChatGPTに英文読解の補佐をお願いすることが多いです。プロンプトをカスタマイズし、分からない文の構文解析、内容の要約など柔軟に活用出来ます。また、ある程度図なども読むことが出来る点が気に入ってます(OCR機能が優秀である程度ならばスクショからも読んでくれます)。

読書記録

読書を通して自己を計画的に成長させていきたい場合、読書記録を取ることは大変有用です。進捗を数値化したり、過去を振り返れるように出来ることが大事なので、読み始めた日、読了日を記録できることは重要です。本書では「読書メーター」などの読書記録サービスが勧められています。もちろんNotionでも可能です。

Notion用の読書記録向けのテンプレートがインターネットからダウンロードできます。

私自身のNotionで作った簡単な読書ログ、カスタマイズできる範囲が広く、楽しいです

一点突破読書法

分野を絞り、その分野の本を最低でも20冊ほど読み、強みに変えていく読書法です。ですが、強みとなる分野を一つに絞った場合、ナンバーワンになることは基本的に難しいです(情報セキュリティ、整数論、英語などの分野の場合、非常に困難)。ですが、これら3つの分野全てが得意な人となると途端に人数は減ります。このようにニッチな分野の組み合わせならば、オンリーワンを目指すことは出来ます。

この読書法はそのような人材を目指す際に有用な方法と言えます。

情報発信&共有

間違いに気付くために、アウトプットは必要

本を読み、インプットするだけでは、理解に誤りがあった場合にも、それに気付けない恐れがあります。ところが、自らの理解に自信がない場合アウトプットに躊躇してしまうことは多々あります。読書を通した自らの理解をより効率よく深めて行くためにも、とりあえずアウトプットする習慣を付けることは重要です。

アウトプットにも様々な種類があります。例をあげます。

  • 資料の作成
  • ブログの執筆
  • コミュニティへの参加(LTへの挑戦)
  • 人へのアドバイス、説明
  • 資格試験の受験
  • レビューを行う

初心者の視点も貴重

上級者は初心者の視点というのを失いがちですが、確実に初心者の視点というものにも需要はあります。このように様々な視点それぞれに需要があるので、自分自身の視点でアウトプットを書くことが重要です。

たくさんアウトプットすることが重要

失敗を恐れてアウトプットを躊躇することはよくありません。継続的にアウトプットをすることが成長には必要なため、アウトプットに関してはある種の楽観主義でいた方がいいとも言えます。

本書を読んで

インプット全般についての意識が変わった

エンジニアにとって情報をインプットしていき、自らの技術に新陳代謝をもたらすことは必要不可欠です。本書は読書に留まらず、そのインプット行為全般についての指南書とも言えると感じました。

本書を読み、作者の一番伝えたかったことは、読書(その他インプットも含む)という行為そのものを楽しみ、情熱を持つことが優れた読書家になる上で一番大事だと言っているように私は感じました。インプットを通して技術を身に付けるのにはどのようにしても時間などがかかります。この行為に時間を大きく割くことは一見非効率に思えるかも知れません。

読書等のインプットをすることが将来の自分への投資であるという感覚は多くの方がすでに持っていると思いますが、それ以上に自らのエンジニアとしてのキャリアを描く上での喜びであると捉えることが大事なんだと思いました。昨日の自分より明日の自分は少しだけ善き人生を生きているという感覚に幸せを感じない者はいないはずです。例えばかつて難しいと感じた本を再読した際に、違った視点で見える自分、それが前の自分より優れた視点であると感じられたとき、技術の向上を感じられます。このように情報技術に限らず、自分自身の成長を実感する場としても読書は優れていると、本書を読み私は改めて実感しました。

このように感じられたのは、本書を執筆したお二人の読書への情熱を余すところなく本書を通して伝えてくれたからだと思いました。

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