こんにちは、ツヨシーサーです。  

「何から考えればよいか分からない。」
「考えが頭の中でぐるぐる回ってまとまらない。」
「表面的にしか考えられない。」

皆さんに思い当たる節はありませんか?お恥ずかしながら、最近もこんなことがありました。例えば、スマホ・アプリの新サービスを企画する際にアイデアを考えることが出来なかったり、課題の解決策を検討したものの網羅的に考えることが出来なかったりしたことがありました。そんな悩みを解決できるかもしれない書籍に出会いましたので、その本からエッセンスを抽出して皆さんにお伝えいたします。思考のメカニズムを深く理解することで、より効果的な判断や意思決定に役立てて頂ければ幸いです。

[参考文献]『思考・論理・分析「正しく考え、正しく分かること」の理論と実践』波頭 亮 著

思考のメカニズム

「思考」とは、『思考対象に関して何らかの意味合いを得るために、頭の中で”情報”(外から得られた情報)と”知識”(頭の中にすでに保有している情報)を加工すること』と定義されています。例えば、目の前に飛んできた小さな物体を観察した結果、身体の色は褐色で、大きな角があり、5cmほどの小さな生き物であるという”情報”から、自分の頭の中にある”知識”と照らし合わせてカブトムシであると判断することが「思考」ということになります。

その思考の核心は、『”情報”と”知識”を突き合わせて比べることであり、比べることにより、”同じ”部分と”違う”部分を認識し、その認識を基に判断や理解を得るプロセスが思考の本質』と整理されています。例えば、身体の色が褐色の昆虫がカブトムシであるかクワガタムシであるかを判断する際、角の有無といった情報を比べることで違いを見極めます。このように、『思考とは”情報”や”知識”を突き合わせて”同じ”か”違う”かを認識し、その認識を集積して理解や判断を得る行為』ということなのです。


思考ができない時は、理解や判断するために必要な”情報”や”知識”は足りているのか、”情報”と”知識”を突き合わせて比べて”同じ”と”違う”を認識できているのかということを疑ってみろということですよね。

思考のメカニズム(出典文書※1( P21)より筆者作成)

分かることは分けること

「思考」とは”同じ”と”違う”の認識作業になります。この認識の集積が思考のアウトプットとして、思考対象に関する理解や判断になるのです。この思考の仕組みとメカニズムは、『分かることとは分けること』とも表現されており、逆に言うと「分かっていないということは分けれていないこと」だと気付かされました。

例えば、身体の色は褐色で、大きな角があり、5cmほどの小さな生き物が目の前に現れた場合、その特徴を自分の持っているカブトムシの知識と照合します。これらの要素が一致した場合に、それはカブトムシであることが分かります。このように、『思考対象の”情報”と持っている”知識”を比べ、要素ごとに同じと違うに分けているのが思考作業』になります。そして、この思考作業を経て思考対象を構成する要素が”同じ”と”違う”に正しく分け尽くされた状態にたどり着くことが「分かる」ということなのですね。

分けるための3要件

それでは、思考対象の情報要素を正しく分け尽くすためには、どうすればよいのでしょうか?この本では以下の三つの要件を満たすことが必要であると書かれています。

  1. ディメンジョンの統一
  2. クライテリアの設定
  3. MECEであること

これらの3つの要件を満たして初めて、正しく分けることができ、正しく理解することが可能になるということですので、詳しく知りたいところですよね。
実体験として「ディメンジョンの統一」で困ったことはないのですが、「クライテリアの設定」では、スマホ・アプリの要件検討をしていた際に、機能面の切り口のみにフォーカスを当ててしまったため、体系的な検討が不足していたことがありました。また、「MECE」では、スマホ・アプリを利用するユーザの動線を検討していた際に、ユースケースの主要ケース以外の考慮漏れがあったため、設計の見直しを行ったという失敗談もありました。

ディメンジョンの統一

『ディメンジョンの統一とは、思考対象や要素を比較する際に、その抽象水準や次元を揃えること』を指します。これにより、適切かつ意味のある比較が可能になるということですね。
ディメンジョンが異なるもの同士を比べても適切な比較ではなく、正しく分けられたことにはならないので、注意しましょうね。

ディメンジョンの統一(出典文書※1 (P30)より筆者作成)

クライテリアの設定

次に、『クライテリアとは、思考対象を分類する基準のこと』です。思考対象をどういう切り口で分けるのかを設定することは、その思考対象をどのように体系立てて分かるのかを決定付けることになるため、適切なクライテリアさえ設定できれば、思考対象を正しく理解し、判断することが可能になるということなのです。
前述のスマホ・アプリ要件検討の失敗時には、「クライテリアの設定」を活用して、機能面だけでなく、ユーザ目線での切り口も考慮して再検討を行ったところ、クライアントを説得することができました。
クライテリアの設定がしっくりこないときは、思考目的に合致したクライテリアになっているのかを確認してみてくださいね。

クライテリアの設定(出典文書※1 (P33)より筆者作成)

MECEであること

最後に、『MECE(Mutually Exclusive Collectively Exhaustive)とは、モレがなくかつダブリがないこと』を指し、論理的な思考や分析において極めて有用なテクニックになります。MECEを用いることで、漏れや重複がない分類が可能になり、正確な分析や考察ができるというわけです。
前述のスマホ・アプリにおけるユーザ動線検討の失敗時には、「MECE」を活用し、ユースケースの90%を占める主要ケースだけでなく、レアケースの残りの10%も考慮しました。その結果、ユーザ動線の抜け・漏れがなくなり、設計レビューでレビューアからOKを頂くことにつなげることができました。
ただし、定性的な対象を分類する場合には数学的論理学的というより、MECE的な分類であれば十分みたいですよ。(MECEに分類するのが難しいケースって実際ありますよね…)

MECE(出典文書※1(P36)より筆者作成)

さいごに

思考とは、情報と知識を突き合わせて比べ、”同じ”か”違う”かを識別するプロセスです。このプロセスを理解することで、より効果的な判断や理解が可能になります。また、「ディメンジョンの統一」や「クライテリアの設定」、「MECE」の活用により、思考の精度を高めることができます。ぜひ、日常生活やビジネスシーンでこれらの思考のテクニックを活用してみてください。
特に「クライテリアの設定」は私も普段から意識しているのですが、切り口のバリエーションをもっておかないと適切にクライテリアを設定できません。そのため、クライテリアの設定が上手な人、つまり、構造化思考で物事を考えるのが上手な人が皆さまの周りにもきっといらっしゃると思いますので、その人からノウハウを吸収するように心がけるのがお勧めです。

いかがでしたでしょうか?

すこしでも皆さまの気づきになれたのであれば幸いです。それではまた。

※1 波頭 亮 (著),『思考・論理・分析「正しく考え、正しく分かること」の理論と実践』,産業能率大学出版,ISBN:978-4-382-05541-4
なお、本文中の『』は出展文書からの引用

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