この連載では、1人目QAとしてのチームの立ち上げや組織づくりに関して、私が実践したことや試行錯誤中のことも含めてお伝えします。
前回の記事では、チームビルディングの概念や考え方の説明と、QAチームにおけるチームビルディングについてタックマンモデルの各段階をもとに概要をご紹介しました。
今回は、QAと開発者という、異なるロール間でのコミュニケーションについてご紹介します。
コミュニケーションというと非常に広い話になりますし、開発者とQAの関わり方や組織の形なども会社によっていろいろな形があります。ただ、私が他社のQAの方から「開発者とのコミュニケーションに課題があって・・・」と相談をいただいて話を聞くと、いくつかのパターンとそれに対する基本的な対応方法があるように感じています。
そこで、この記事ではQAと開発者とのコミュニケーションに関してよく聞く課題と、とくにQAと組織を立ち上げていく過程で気をつけるべきことについてご紹介します。
QAと開発者とのコミュニケーションにおける課題
QAにとって、開発者との関係性というのは非常に大切です。これは実際にQAとして働いている方にはほぼ確実に同意していただけるのではないでしょうか。
QAだけががんばってもプロダクトの品質向上には限界があり、開発者やマネージャー、デザイナーなど他のさまざまなロールの方と協力して初めて品質を高められます。特にQAが業務レベルで関わるのは開発者である場合が多いはずです。
そのため、開発者との関係性がよければ互いに協力して品質を高めることができますし、逆に関係性が悪いとなかなか同じ方向を向けず品質にも悪影響があります。最近よく聞く言葉で言えば、開発者とQAが協調するとか、互いにロールの垣根を越えて(越境して)働くとか、そういった動き方が良しとされていますね。
こうした理想の姿については、それほど反対されることはないかと思います。
しかし、実際に現場でQAとして働いている方の話を聞くと、開発者とQAとの間のコミュニケーションについていろいろな問題があるようです。
たとえば、技術面で開発者とコミュニケーションが取りづらい、品質に対する温度感の違いがある、QAに対してネガティブなイメージを持たれている、などです。そうした問題をいろいろな方から聞いた中で、大きく以下2つの要素が多く出てくると気づきました。
- QAエンジニアの役割や業務が開発者側に伝わっていない
- コミュニケーションの土台が不足し、開発者体験が悪化している
それぞれについて、どのように対応すればよいのか考えていきましょう。
QAの役割や業務に対する理解を得る
ひとつめは、QAの役割や業務が開発者側に伝わっていないという問題に対する対応です。これは単純に問題の裏返しで、QAの役割や業務に対して理解を得ましょう、という話です。
とくにQA組織をこれから立ち上げる場合はQA組織の位置づけ、どのような役割を担うのか(それによって開発者の動きがどう変わるのか)などが明確になっていないと、すれ違いが発生します。
よく聞く具体的なお悩みとしては、大きく2パターンです。
- 品質に対する考え方に関するもの
- 開発者が「テストはQA・テストエンジニア側のしごと」と考えている
- 品質に対する開発者の意識が低い、大事だと思ってくれていない
など
- QAの役割・動き方に関するもの
- QAが居ると開発スピードが遅くなる、と思われている
- 重要でない細かい指摘をたくさんされると思われている
など
これらの開発者からQAに対する誤解については、ていねいに説明をして理解を得ていくことが大切です。
方法1:QAがやること・やらないことの宣言
これは私が事あるごとにオススメしている方法なのですが、その組織の中でQAエンジニアが何をやるのか&何をやらないのかを宣言することで理解してもらう、というものです。
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