こんにちは。クオリティマネージャーのおすぎです。
プロジェクトマネージャーやテストマネージャーといった、プロジェクト管理を担う方であればPMBOKについて勉強した方もいらっしゃると思います。
PMBOKはプロジェクトマネジメントの世界標準になっているもので、アメリカの非営利団体であるPMI(プロジェクトマネジメント協会)(※1)(※2)が、プロジェクトマネジメントの知識を体系化して標準化したものです。
私もプロジェクトを任されるようになった際、困ったことがあればPMBOKに倣おうと思い、PMBOKの書籍を手元に置いていました。
しかし、書籍を読んだからといって上手くいくとは限らず、「自分のプロジェクト管理はPMBOKに倣えているのか」「PMBOKで謳っていることを正しく実践できているのか」と自信を持つことができずにいました。
そんなときに会社の先輩から教えてもらったのがPMPでした。
PMP取得により仕事の変化を実感でき、私のキャリアの大きな分岐点になりました。
そんなPMPのメリットをご紹介します。
PMPとは
PMPはProject Management Professional(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)の略で、PMIが認定するプロジェクトマネジメントの国際資格です。
PMPで問われる知識やスキルはPMBOKガイドに基づいており、PMPの資格取得者はプロジェクトマネジメントの体系的な知識を備えているとみなされます。
日本で聞くことはほとんどありませんが、海外ではPMPの資格保有がプロジェクト受注の要件になることもあるようです。
受験資格に「プロジェクトマネジメントの実務経験」と「PMIが認定している公式な研修受講」が必要な点と、資格取得後も3年ごとに資格更新が必要な点も特徴です。(※3)
また、プロジェクトマネジメントの資格として比較されるものに、情報処理推進機構が実施するプロジェクトマネージャー試験(※4)があります。
プロジェクトマネージャー試験はIT分野を対象にした国家資格ですが、PMPは分野を問わず、あくまでプロジェクトを対象にした民間資格です。
IPAが定義しているITスキル標準(ITSS)では、PMPはレベル3、プロジェクトマネージャー試験はレベル4、と位置付けられており、プロジェクトマネージャー試験と比較すると取得しやすいと言われています。
PMPのメリット
PMI日本支部のホームページには、PMP取得により期待できる効果として以下の3つが記載されていますので、私の経験も踏まえて紹介します。
- スキルアップ
- キャリアアップ
- 人的ネットワークの拡大
スキルアップ
PMBOKはIT分野に特化したものではなく分野に特化せず横断的に活用できるものですので、どのようなプロジェクトであってもなんとかなる、という自信が持てるようになります。
私がプロジェクト管理を任され始めた当初は、プロジェクトの立ち上げやプロジェクトを引き継ぐとなった際に「何から手をつければ良いかわからない」「どこに課題があるかわからない」といった事が多く、自身の対応に自信が持てなくなっていました。
しかしPMP取得後は、プロジェクトの立ち上げやプロジェクトの引き継ぎがあっても、PMBOKのフレームワークに沿って対応すれば問題ないと自信が持てるようになりました。
また、プロジェクトマネジメントに対する知見も増えてきます。
プロセス上の問題点に気づくことで継続的な改善に繋げれますし、ステークホルダーへの説得力も増し、信頼を得ることにも繋がります。
PMPを取得するとCCR(※5)と呼ばれるプログラムへの参加が必要になり、CCRプログラムを通じて3年ごとの資格更新が必要になります。
CCRプログラムは資格保有者の継続的な学習活動や能力開発を支援するものです。
PMP所有者は資格を維持するために継続的に学習を続けるため、必然的にスキルが身についていきます。
私も書籍を読んだり、e-Learningやセミナーなどを活用して資格維持に努めています。
キャリアアップ
PMPの取得により資格手当が出る企業もあれば、昇給や昇格に繋がる企業もあるかもしれませんが、私が最も実感しているのは安定して成果が出せるようになったことです。
それまでは過去に経験した方法や前任者の方法を踏襲してプロジェクトを管理していましたが、想定していない事象が発生した際に上手く立ち回れないことが多かったです。
しかしPMBOKの知識エリアに沿って事前に備えることができるようになり、プロジェクトの成功率が上がっていきました。上司や周囲からも信頼されるようになり、重要なプロジェクトを任せて貰えるようになっていきました。
また、PMPの資格が認定されると名刺への記載が可能になり、プロジェクトマネジメントの専門知識を持っていることを対外的に示すことができるようになります。名刺交換の際もPMPの記載を見ると好意的な反応をしてくださる方が多い印象があります。
人的ネットワークの拡大
PMPの受験資格を得るためには公式な研修への参加が必須条件になっています。
また、PMIが主催するセミナーや勉強会も頻繁に実施され、SNSのコミュニティーも多くあります。
私もPMP資格更新に必要なポイントを得る目的でセミナーに参加することがあります。
そのような場には、共通の目的や目標あるいは同じような課題を抱えた方が集まっています。
PMPは様々な分野の方が取得されていますが、PMPで学んだことが共通言語としても活用できるので、コミュニケーションがとりやすいです。
自己紹介や身の上話をしていく内に、自分にあったコミュニティーを紹介して頂いたこともあれば、自社が提供しているサービスを紹介して案件化するなどビジネスに繋がったこともありました。
また、PMPは3年ごとに資格更新が必要で、その要件を満たすことに苦労される方もいるため、PMP所有者同士で情報交換するなど仲間意識が芽生えやすかったりもします。
勉強方法
私がPMPを取得したときはPMBOK 第6版が最新版でしたので、今と若干内容が異なっているかもしれませんが、参考までに私がPMP合格に至った勉強方法をご紹介します。
なお、勉強期間は4ヶ月でした。
①「5つのプロセス群」「10の知識エリア」「49のプロセス」を暗記する
下記は知識エリアとプロセスをまとめた表です。
私が最初に取り組んだのは、この知識エリアとプロセスの表を元に、どの知識エリアにどのようなプロセスがあるのかを徹底的に暗記することでした。知識エリアごとにノートに書き出し、正しく記載できるまで何度も繰り返し書いて覚えました。
②各プロセスごとのITTOを理解する
ITTOとは Inputs Tools&Techniques Outputs の頭文字を取ったもので、「インプット」「ツールと技法」「アウトプット」のことです。
PMBOKのプロセスは、「インプット」となる成果物や情報を、「ツールと技法」を使用して、「アウトプット」となる成果物や成果を作り出す活動です。
あるプロセスの「アウトプット」の成果物が、別プロセスの「インプット」になることもあります。
その関連を理解します。
私はPMBOKの書籍を読みながら、実際の活動を頭の中でイメージしていました。
各プロセスでの活動がどの成果物に影響するのか理解する必要がありますが、はじめにプロセスをしっかりと暗記できていたので、関連が理解しやすかったです。
③過去問を解く
PMPの試験は制限時間230分で180問(採点されないダミーが5問含まれます)が出題され、正答率60%程度が必要と言われます。
なので、その正答率を安定してクリアするまで、がむしゃらに過去問を解きます。
過去問を解いては書籍での復習を繰り返しました。
私は過去問を2冊準備しましたが、2冊続けて正答率が70%を超えることを自身に課しており、その努力の甲斐あって無事合格するに至りました。
さいごに
昨今のプロジェクトマネジメントはPMBOKが主流であり、例えば計画書と呼ばれるものはPMBOKに準拠していることがスタンダードになっています。
これまでプロジェクトマネジメント業務を自己流で進められていた方も多いと思いますが、PMBOKの体系だった知識を身につける事で、今まで以上にスムーズにプロジェクトマネジメント業務を進めることができます。
PMPの受験資格の要件を満たすことが難しい方は、CAPM(Certified Associate in Project Management)(※6)というPMPの下位に相当する試験も準備されています。
こちらもPMBOKの基礎的な内容が問われるもので、PMBOKの理解を深めるのに役立ちます。
PMBOKは1996年に第1版が発行され、最新版は2021年に第7版が発行されているように、プロジェクトマネジメントの世界も進化し続けています。
私もその進化に遅れを取らないように、これからもスキルアップを怠らないようにしたいと思います。
▼関連記事|PMP保持のプロジェクトマネージャー西田美香さんの連載記事もおすすめです。
出典
※1
PMI(Project Management Institute, Inc.)
https://www.pmi.org/
※2
一般社団法人 PMI日本支部
https://www.pmi-japan.org/
※3
PMP®資格について
https://www.pmi-japan.org/pmp_license/pmp/
※4
プロジェクトマネージャー試験
https://www.ipa.go.jp/shiken/kubun/pm.html
※5
資格の更新について
https://www.pmi-japan.org/pmp_license/renewal/
※6