プロジェクト管理ツールとしての「議事録」|「言った・言わない」をなくす!”使える”議事録作成の秘訣

こんにちは、QAコンサルタントのW-Hです。

プロジェクトの遂行においては、コミュニケーションの一環として、定例会議やアドホックな会議が行われていると思いますが、私は会議の「議事録」を「プロジェクト管理ツール」の1つとしてとらえています。

そのキッカケとなったのは、今よりずいぶん若い30代半ばだった頃、あるトラブルプロジェクトのリカバリーPMに任命されたことでした。

製造~テスト工程で検出された非機能面の問題が収束せず、延伸が続いていたプロジェクトでした。

着任してお客様から言われたのは、「貴社の実装が、設計時に言っていたことと違う」ということでした。自社のチームのメンバーに確認したところ、「お客様の方が言ってることが違う」という見解だったのですが、それを示すエビデンス(議事録)が残っておらず、最終的には発注者側であるお客様の言い分を尊重して進めることを選択しました。

記録が残っていない以上、「言った・言わない」の議論を続けるのは生産的ではありません。

以来、私は、お客様のみならず、社内のステークホルダーとの会議においても、議事録に正確な記録を残し、それを重要なプロジェクト管理ツールとして運用していくことを重要視するようになりました。

以下、「プロジェクト管理ツール」として「議事録」を運用するにあたりに、私なりに大切にしているポイント(≒こだわり)をご紹介します。

議事録の目的

広辞苑によると、議事録は「会議の議事の主要事項・討議の状況を記録したもの」とされています。

私は、上述の経験を教訓として、議事録を残す目的を以下の3点ととらえています。

  1. 問題が発生したときや、意見や記憶の食い違いが生じたときに合意点に立ち戻れるようにすること。
  2. 記録をすることより、「言った・言わない」の水掛け論を防止すること。
  3. 文書として一定期間、保管・管理することにより、当事者の記憶が薄れた場合や、議論当時の当事者が不在となった場合でも基礎情報に立ち戻れるようにすること。

議事録に求められる品質

「議事録の目的」を達成するためには、単に議事録を作るだけではダメで、以下のような品質が求められると考えています。

  1. 誰が読んでも同じ理解に至り、解釈に差異の出ない記述
  2. 「言った・言わない」の水掛け論が生じないような記述
  3. 判読性の高い構成と記述

議事録が「無い」、あるいは「品質が低い」場合に想定される弊害の例

以下のようなシナリオは読者の皆様にもご経験があるのではないでしょうか?

  1. 関係者同士で「口約束」で合意した事項があったが、当事者が退職してしまい、その内容を知る人がいなくなった。
  2. 議事録は作成したが、出席した当事者間でしかわからない書き方(≒会話の羅列)になっており、第三者には結論や合意事項がよくわからず、当該議事録をビジネス判断の材料として利用できなかった。
  3. 議事録は作成したが、結論や合意事項に至った会話の流れを一切記載しなかったので、欠席していた上司から、「XXXという観点での検討はされたのか?」という問い合わせを受け、再度、上司出席の下で同じ議論を繰り返す必要が生じた。(いわゆる、”巻き戻し”)
  4. 会話に発言者の氏名を記載していなかったため、時間が経過した後、誰の発言、判断で意思決定がなされたのかがわからなくなった。

議事録作成時のポイント

さて、これまでに述べた議事録に求められる品質を担保し、弊害を防止するためには、以下のようなポイントに配慮が必要と考えています。

  1. 結論や合意事項は、ポイントを押さえて簡潔にまとめる。箇条書きや表・図を活用する。
    • 結論だけ知りたい第三者もいると思われるため、議事録の冒頭に記載するのがよい場合がある。
  2. 結論や合意に至った協議や会話の流れを、議論のキーポイントに焦点を当てて記載する。
    • 結論や合意事項のみを記載しても、会議に出席していないメンバーに判断の根拠が伝わらないので、どのような会話がなされたのか、どのような観点で議論が進み、結論に至ったのか、を記載する。
  3. 単に会話の羅列だけではNG。あくまで議論のキーポイントに焦点をおいてなるべく簡潔にまとめる。
  4. 会話の記録には、発言者の氏名を付記する。時間が経過すると、「誰がこの発言、判断をしたのか」など、発言者本人も忘れてしまう場合がある。
  5. 客観的な「事実」とそれ以外のアイテム(例:意見、アイデア、感想、推察など)が混同されないように配慮する。
  6. 作成した議事録は出席者間で相互確認し、必要に応じて修正をした上で、合意を得て、内容確定させる。議事録の内容が出席者の合意を得られている旨のエビデンスを残しておく。ここまで完結させて、合意エビデンスとしての議事録が有効となり、「議事録の目的」を達することができる。

会議ファシリテータに求められる役割

ファシリテータが会議をリードする例

議事録が有効なものになるためには、実は、まず会議自体の中身が有効なものでなければなりません。そのためには会議のファシリテータには以下の役割が期待されます。
これには相応の経験が必要と思います。

  1. 会議の目的を十分に理解し、目的に合致した議論が進むようにリードする。
  2. 結論や合意事項が明確になるように会話をリードする。例を以下に示します。

ファシリテータが会議をリードする例

あるプロジェクトキックオフ会議での会話の議事録について、2つのケースを想定します。

ケース1 議事録例

メールで事前にプロジェクト計画書をお送りしましたが、ご確認いただけましたでしょうか?(PM山田)
→ 一通り目を通した。(お客様川田)
→ ありがとうございます。(PM山田)

ケース2 議事録例

メールで事前にプロジェクト計画書をお送りしましたが、ご確認いただけましたでしょうか?(PM山上)
→ 一通り目を通した。(お客様川上)
→ ありがとうございます。プロジェクト計画書の内容はご承認いただけますか。(PM山上)  
→ 承認する。(お客様川上)

いかがでしょうか。どちらが会議をリードしているかは一目瞭然ですね。

ケース1については、お客様川田さんは「一通り目を通した」と言っているだけで、承認したかどうかの意思表示をされていません。PM山田さんは御礼を述べているだけです。このままでは会議での確認結果として有効ではありません。

ケース2では、ファシリテーターであるPM山上さんが、追加で「ご承認いただけますか。」という問いかけをし、お客様川上さんの「承認する」という発言を引き出すように会話をリードしています。お客様の「承認する」という記録がエビデンスとして有効になるわけです。

AIによる議事録、文字おこしの活用について

以上、かなりアナログな視点でのお話をしてきましたが、昨今、AIを用いた議事録や文字おこしを利用されているケースも多いと思います。

弊社内でも使われていますが、うまく要旨を掴んでまとめているのに感心することがしばしばあります。アジャイル開発のチーム内の会議のメモとしてはそのままで使えそうですね。

ただ、あくまで私見ですが、ウォーターフォール開発や、重要なビジネス意志決定をするような会議については、これらのAI機能は、最終的な「議事録」へのインプットとする「議事メモ」として活用するのがよいと思います。(セキュリティ、機密情報保護を担保する使い方をすべきであることは言うまでもありません。)

その「議事メモ」を基に、会議の目的に合致した形で、構成や表現を整えて、「議事録」としてまとめるのが、少なくとも現時点では適切なアプローチと考えています。

あと、プロジェクトマネジメント領域のキャリアを志向している若手エンジニアの方には会議の進め方やまとめ方のスキルを身に着ける意味でも、ご自身の手で議事メモや議事録を作成する経験を積むことをお勧めしたいです。決して無駄な経験ではないと思います。

まとめ

冒頭に「プロジェクト管理ツール」と書きましたが、これは「合意事項のエビデンス」であることを再認識した上で「議事録」を活用する、という意図でした。

今回、「合意事項のエビデンス」として「議事録」を意味あるものにするために、普段、私が重点をおいている考えについて述べさせていただきました。ご参考になれば幸いです。

ありがとうございました。

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