
こんにちは。Sqripts編集部のハチワレです。
かつてはフロントエンドやUI開発に携わり、テクニカルサポートも経験しましたが、現在の私の主戦場はマーケティング。技術と非技術の狭間に佇み、両方の世界を行き来する日々を過ごしております。
前回は「Generative AI Leader(生成AIリーダー)認定資格試験を受けてみた」と題し、Google Cloudの認定資格にチャレンジした体験をお伝えしました。
今回はその学びを活かし、技術的なバックグラウンドに関わらず、ビジネスパーソン全般に役立つ生成AIの基礎知識と実践的な活用方法をお届けします。
はじめに
昨今、生成AIは私たちの暮らしに急速に溶け込んできました。
今日の夕食のレシピを考えて
週末の旅行プランを立てて
渋滞を避ける最適なルートは?
など、日常のちょっとした場面で気軽に活用できるのが魅力です。ふとした遊び心で使ってみると、その応答の豊かさに驚かされることも少なくありません。しかし、遊びや生活での活用と、ビジネスでの活用は少し異なります。特に業務で効果的に使いこなすには、単なる「お遊び」を超えた基礎知識と実践的な視点が求められます。
プログラミングスキルの有無にかかわらず、「AIを業務に効果的に取り入れたい」、「チームのAI活用を推進したい」という方に、明日から使える知識をお伝えできればと思います。
生成AI時代に必要な基礎リテラシー
対話型AIとのコミュニケーションという新しいスキル
現代の生成AIの最大の特長は、普通の会話のように対話できることです。技術的な詳細を理解していなくても、効果的なコミュニケーションができれば誰でも活用できるのが魅力です。
例えるなら、専門知識を持つアシスタントと会話するようなものです。その道に詳しければ会話が深まりますが、基本的なやり取りには高度な専門知識は必ずしも必要ありません。
大切なのは「何を、どのように伝えるか」という対話の作法。これは実は多くの方が日々の暮らしの中で自然と磨いているものでもあります。
AIとの対話は、ある意味「言葉のキャッチボール」です。投げ方次第で返ってくる球の質も変わります。丁寧に、意図を明確に伝えることで、AIからも価値ある返答が得られます。
なぜ今、技術者も非技術者もAIリテラシーを持つとよいのか
Generative AI Leader資格の学習を通じて強く感じたのは、AIツールは「技術を作る人」も「技術を使う人」も、立場を問わず恩恵を受けられるということです。
技術者にとっては開発効率の向上や創造的な問題解決のツールとして、非技術者にとっては専門知識のギャップを埋めてこれまで届かなかった領域へ手を伸ばしたり、業務を効率化したりと、新たな可能性を開くツールとして機能します。
最近興味深く感じていることのひとつは、技術者と非技術者が協働する際の「共通言語」としてのAIです。お互いの専門性を尊重しながら、AIを介して効果的なコミュニケーションを図ることができます。かつては疎通にストレスを感じていた両者の会話が、AIという翻訳者を得て、よりスムーズに、豊かになる可能性を秘めています。
共通言語としての使用の実例
先日、開発部門の担当者から、私の理解が及ばない質問を投げかけられました。自分の守備範囲と異なりましたが間違った回答をするわけにもいかず、Geminiに聞いてみることにしました。
■プロンプト例
私はマーケティング担当者で●●のWebサイトの管理をしています。
現在△△のプロジェクトが進行中で、作業は現在▲▲のフェーズにあります。
▲▲を進めるにあたり開発担当者から以下のような質問が来ました。
この中で「******」という記述の部分について、質問の意図がわからず回答に困っています。
どのように回答するのが適切ですか?
[ここに開発部門からの質問をコピペ]
するとGeminiは内容を的確に判断し、フェーズの作業の理解と「******」の質問の意図、回答例について教えてくれました。Geminiの回答を読んであらためて開発者からの質問を見ると、確かに内容に誤りはないなと思えたので、その回答をアレンジして返信しました。結果、問題なく作業を進行することができました。

生成AIの限界を理解することの重要性
生成AIの活用において大切なことの1つに、「その可能性と限界の両方を理解すること」が挙げられます。生成AIは「魔法の杖」ではなく「便利だけど特性のある道具」として捉えることが重要です。
特に注意すべきは、
- ハルシネーション(事実と異なる情報を自信を持って提示すること)の可能性
- 最新情報へのアクセス制限(トレーニングデータによる)
- コンテキスト理解の限界(長い会話や複雑な状況の把握には限界がある場合がある)
こうした限界を理解した上で活用することで、より効果的に生成AIを業務に取り入れられます。
また、それぞれの限界を「できるだけ回避する技術」もあります。ですが、まずはその技術についてよりも「そういう技術もある」という知識を持ち、必要になった時に深掘りする姿勢が大切です。
社外秘情報を扱う際の注意
生成AIという便利な道具を手にした私たちですが、ことビジネスにおいては慎重に取り扱うべき情報があることも忘れてはなりません。特に企業活動の中では、社外秘情報という守るべき大切な情報の数々があります。
AIに教えてはいけないこと
生成AIは基本的に「会話の内容を学習する」仕組みになっています(学習しない設定にもできますが、一般論として語ります)。これはつまり、私たちが入力した情報は、サービス提供元のサーバーに送信され、場合によっては将来のモデル改善のために使われる可能性があるということです。
特に注意が必要なのは、
- 顧客等の個人情報(氏名、連絡先、購入履歴など)
- 未発表の製品情報や研究開発データ
- 社内の財務情報や人事情報
- 取引先との契約内容
- アクセス認証情報(ID・パスワード・秘密鍵など)
こうした情報をそのままAIに入力してしまうと、知らず知らずのうちに情報漏洩の原因となりかねません。AIに尋ねる前に、一呼吸おいて「この情報は外部に出しても問題ないだろうか」と自問する習慣をつけましょう。

情報を匿名化・一般化する工夫
それでも業務上、機密性の高い文書や情報について生成AIの力を借りたいこともあるでしょう。そんな時は、情報を「匿名化」したり「一般化」したりする工夫が役立ちます。
【具体例】
【NG例】
山田太郎様(43歳)からクレームがありました。先日購入いただいたXYZ製品について、起動しないとのことです。購入日は2024年10月15日、シリアルナンバーはABC-12345です。適切な対応方法を教えてください。
【OK例】
あるお客様から製品不具合のクレームがありました。先日購入いただいた当社製品について、起動しないとのことです。適切な初期対応と調査手順を教えてください。
具体的な固有名詞や識別情報を削除しても、多くの場合は有益なアドバイスを得ることができます。必要な情報だけを入力するようにしましょう。
企業におけるAI利用ガイドラインの重要性
組織全体で生成AIを活用する際には、明確なガイドラインを設けることが大切です。
ガイドラインに含めるとよい項目
- 利用可能なAIサービスの指定
- 入力してよい情報と禁止情報の明確化
- 生成AIの出力結果の取り扱い方針
- 緊急時の対応手順
- 定期的な教育・研修の実施
こうしたガイドラインがあることで、社員一人ひとりが安心してAIの恩恵を受けられる土壌が育まれます。
セキュリティを考慮したサービス選択
すべての生成AIサービスが同じセキュリティレベルで提供されているわけではありません。企業の機密情報を扱う可能性がある場合は、特に以下のポイントに注目してサービスを選びましょう。
- エンタープライズ向けプランの有無
- データの保持・削除ポリシー
- プロンプトとレスポンスの暗号化
- オンプレミス/プライベートクラウド対応
- SOC2やISO27001などの認証取得状況
例えば、Google CloudのVertexAIやMicrosoftのAzure OpenAIなどは、企業向けのセキュリティ機能を備えています。個人利用の無料サービスと企業利用のエンタープライズサービスは、使い分けることが賢明です。
生成AIは力強い味方ですが、大切な情報を守るのはあくまで私たち自身です。便利さと安全性のバランスを取りながら、賢く活用していきたいものです。
プロンプトの力:言葉の選び方が結果を変える
同じAIでも全く異なる結果が得られる不思議
生成AIを使う中で、指示の出し方を少し変えただけでまったく異なる結果が得られるという経験をされた方も多いのではないでしょうか。
たとえば、
マーケティング計画書のテンプレートを作って
と頼むのと、
20代向けSaaSプロダクトのマーケティング計画書で、特にSNS活用に重点を置いたテンプレートを作成して。競合分析セクションも含めて
と頼むのとでは、得られる結果の質が天と地ほど違います。
ぜひ普段使っている生成AIで上記のプロンプトを入力してその結果を見てみてください!
プロンプト例と改善例(ビフォー・アフター)
【改善前】
システム仕様書を書いて
【改善後】
次の条件でシステム仕様書のテンプレートを作成してください。
・対象システム:社内向け在庫管理アプリ
・主な機能:在庫登録・検索・レポート出力
・利用者:倉庫スタッフと管理者
・開発環境:React+Node.js
・セキュリティ要件:ロール別アクセス制御必須
特に技術仕様と画面仕様のセクションを詳細に
改善前では汎用的な内容しか得られませんが、改善後ではより具体的で実用的なテンプレートが得られます。この差がプロンプトの力です。
誰でも使える基本的なプロンプトテクニック4つ
- 5W1Hを意識する
Who(誰が)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どのように)を明確にします。 - 役割を与える(ロールプロンプティング)
「あなたはセキュリティ専門家として…」「経験10年のプロダクトマネージャーの視点で…」といったように、AIに特定の専門家の役割を与えると、その視点からの回答が得られます。 - 出力形式を指定する
「表形式で」「箇条書きで」「600字以内で要約して」など、出力の形式を指定することで、より使いやすい結果が得られます。目的に合った形式を考えるのも、プロンプトの腕の見せどころです。 - 出力の例をいくつか提示する(Few-shotプロンプティング)
出力に特定の文脈・型を指定したい場合は出力例をいくつか提示することで、型に合った回答を得ることができます。ただし、型に適合するあまりに「一般化能力」が損なわれる恐れがあります。
これらのテクニックは技術的なバックグラウンドに関わらず、どなたでも実践できるものです。プロンプトの質がAIとの対話の質を決めるといっても過言ではありません。
組織の中での効果的な生成AI活用法
組織の中で生成AIを活かす道は一つではありません。それぞれの立場で、それぞれの視点から、AIを取り入れることで、組織全体に新たな可能性の芽が育まれていきます。さまざまな立場から見たAI活用の姿をご紹介します。
マネジメント視点:チーム全体の生産性向上への活用
マネジメント層にとって、生成AIは組織全体の生産性を向上させるツールとなります。
例えば、
- チーム間コミュニケーションの効率化(議事録作成・要約、アクションアイテムの抽出)
- リソース配分の最適化(複数のシナリオシミュレーション)
- 意思決定のサポート(データに基づく客観的視点の提供)
実際の活用例としては、
- 週次レビューの議事録をAIで要約し、次週のアクションアイテムを自動抽出する
⇒フォローアップの漏れが大幅に減少する
などの事例があります。
開発者視点:コーディングと設計プロセスの強化
エンジニアにとっての生成AIは、単なるコード生成ツール以上の存在です。
- コードレビューの効率化(潜在的な問題点の指摘)
- ドキュメント生成(コメントからの自動ドキュメント作成)
- アイデア出しと設計支援(異なるアプローチの提案)
- テストケース生成(エッジケースの検討)
昨今注目されているのは「講師としてのAI」という使い方です。新しい技術やライブラリについて、AIに説明させたり、サンプルコードを生成させたりすることで、学習効率が大幅に向上します。
▼こちらの記事では、AIがテストエンジニアの日常をどう変えるのか?AIの活用方法について解説しています。ぜひ参考にしてください。
業務担当者視点:日常タスクの効率化と創造性の拡張
日々の業務を担当する方々にとって、生成AIは次のような場面で力を発揮します。
- 文書作成の効率化(レポート、企画書、メールの下書き)
- 情報整理と要約(大量の資料からの重要ポイント抽出)
- アイデア出しとブレインストーミング
- 多角的視点の獲得(異なる立場からの意見や観点の提示)
私自身、マーケティング企画資料の作成時間が半分以下に短縮された経験があります。ただし、AIの出力はあくまで「叩き台」であり、内容の正確性や適切性は人間がチェックする必要があります。
【関連用語】
HITL:Human-in-the-Loop(人間参加型)
AIによる自動化された作業や生成プロセスに、人間が意図的に介入する仕組みやアプローチ。
人間は、AIの出した判断や結果を最終的にチェック・承認したり、誤りを訂正・学習データとしてフィードバックすることで、AIの精度と信頼性を継続的に高める「不可欠な監督者・共同作業者」の役割を果たします。
「AIの得意なところ」(大量処理・高速生成)と 「人間の得意なところ」(判断力・倫理観・細かな調整)を組み合わせ、最も質の高い結果を出すことを目的とします。
ユースケース別・最適なAIモデル選び
Google系サービス(Gemini Enterprise、Notebook LM、VertexAI)の特長と使い分け
Google Cloudの生成AI製品群は、それぞれ得意分野が異なります。
- Gemini Enterprise (旧Agentspace):
複数のタスクを連携させた複雑な業務に最適です。例えば「データを読み解き、傾向を把握した上で提案資料を作る」といった一連の流れを自動化できます。APIや外部システムとの連携もできるため、業務プロセス全体を効率化したい場合に適しています。 - Notebook LM:
データ分析と文書作成を組み合わせたい場合に威力を発揮します。数値データから洞察を得て、それをわかりやすいレポートにまとめる作業が得意です。データドリブンな意思決定を支える強い味方となります。 - VertexAI:
より高度なカスタマイズやチューニングが必要な場合に適しています。企業特有の専門用語や業界知識を学習させたモデルを構築できます。技術チームと業務チームの連携によって大きな効果を発揮できるプラットフォームです。
Claude、ChatGPTなど他社サービスとの比較
Claude: 文章の論理性や一貫性に優れており、長文の作成・要約・分析が得意です。レポートや提案書など、論理的な文書作成のサポートに適しています。また、倫理的配慮が強いのも特徴です。
ChatGPT: 最も汎用的で使いやすいのが特徴です。特にGPT-4は創造的な発想や多角的な視点の提供に優れています。アイデア出しやブレインストーミングのサポートに最適です。プラグイン機能で拡張性も高いです。
重要なのは「どれが一番優れているか」ではなく「どのケースにどのツールが最適か」を判断できるリテラシーです。それぞれの特性を理解し、場面に応じた選択ができることが、生成AIリテラシーのひとつの形であるように思います。
▼こちらの記事ではTeamsとCopilotを使った議事録作成を紹介しています。ぜひ参考にしてください。
明日から実践できる生成AI活用の第一歩
既存業務フローの中で無理なく始めるポイント
生成AIの活用を始める際のコツは、いきなり大きく変えようとせず、既存の業務フローの「ちょっとした隙間」から取り入れることです。
例えば、会議の議事録作成、週次レポートのドラフト作り、企画のブレインストーミング、参考資料の要約など、「失敗しても大きな影響がない」作業から始めるのがおすすめです。成功体験を積み重ねてから、より重要なタスクに応用していきましょう。
また、組織全体に一気に導入するのではなく、まずは小さなチームや個人レベルで効果を実感してから、徐々に広げていくアプローチも効果的です。
小さな成功体験を積み重ねる方法
私自身の経験では、以下のステップで進めると成功しやすいです。
- Geminiを常に開いておく(業務での普段使いの生成AIならなんでもよいです)
- 1日数分の「AI実験タイム」を設ける
毎日少しだけ、業務の一部をAIに任せる時間を作りましょう。
(出力に感動して活用したくなるフェーズです) - 成功と失敗を記録する
どんなプロンプトが効果的だったか、何が上手くいかなかったかをメモしておく。
(実験フェーズです) - 同僚と知見を共有する
「これ、AIを使ったらすごく楽になったよ」と具体的な成功事例を伝える。
(人に言いたくなるフェーズです) - 「AIでやること」「人間がやること」を明確にする
AIに全て任せるのではなく、人間の判断が必要な部分を意識する。
(リテラシーの必要性を痛感するフェーズです) - 業務にAIを組み込む
出力に納得できたら「この業務は生成AIに」を決めて次回以降は必ずAIを使用する。
(生成AIを頼れるメンバーとして認めるフェーズです)
試してみたい具体的なプロンプト例3つ
- 会議の効率化プロンプト
来週の進捗会議(参加者:マネージャー、開発担当、デザイナー、マーケティング担当)のためのアジェンダを作成してください。
目的は、現在の進捗確認と課題の洗い出しです。特に議論すべき重要な点と、各トピックの目安時間も含めてください。全体で45分に収めたいです。
2. リスク分析プロンプト:
新規Webサービス立ち上げプロジェクト(予算300万円、期間3ヶ月、チーム5名)において考えられるリスクを分析してください。
技術面、スケジュール面、予算面、人員面の各観点から考えられるリスクと、その対策案を優先度順にまとめてください。
3. 技術資料の理解促進プロンプト:
以下のAPIドキュメント概要を、プログラミング初心者でも理解できるように噛み砕いて説明してください。
特に、基本的な使用方法と具体的な実装例を示してください。
[APIドキュメント概要を貼り付け]
まとめ:技術と非技術の架け橋としての生成AI
「使う視点」と「作る視点」の協働がもたらす可能性
生成AIの真価は「技術そのもの」と「その活用法」の両論にあります。
技術者は「どうやって作るか」に注力し、非技術者は「どう使うか」に知恵を絞る。そして両者が協働することで、AI活用の可能性は最大限に広がります。
特に期待されるのは、技術者と非技術者の間のコミュニケーションギャップを埋める役割です。AIが共通言語となることで、お互いの専門性を尊重しながら協働できるようになります。
最後に、生成AIリテラシーの基本は「道具としてのAI」という視点です。”金槌”を使う大工さんが金槌の内部構造を詳しく知らなくても素晴らしい家を建てられるように、AIの内部構造を詳しく知らなくても、それを使いこなして素晴らしい成果を生み出すことはできます。
同時に、より良い金槌を作るために金属工学の知識が役立つように、AIの仕組みについての理解が深まれば、その活用法もより洗練されていきます。
技術者も非技術者も、それぞれの強みを活かしながら、生成AIという道具を使いこなしていくことで、私たちの働き方はより創造的で、より価値の高いものになるはずです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
▼関連記事「Generative AI Leader(生成AIリーダー)認定資格試験を受けてみた|知識ゼロから始めた学習方法と試験対策」はこちらです。




