みなさんこんにちは、マッシュです。
今回、eKYCのテストを行う際に使用可能なテストデータの作成方法について紹介していきたいと思います。
はじめに
eKYCとはelectronic Know Your Customerの略で、免許証やマイナンバーカード、本人のセルフィー撮影など、本人確認が必要な手続きをオンライン上で行う仕組みのことです。
※オフラインで行う本人確認はKYC(Know Your Customer)
※eKYCとは(Wikipedia)
eKYCは口座開設やクレジットカードの発行等で使用されているため、みなさんの中にも実際に使ったことのある方は多いのではないでしょうか。では、eKYCを利用した時のロケーションは同じだったでしょうか。部屋の明るさ、照明との距離等、様々な違いがあったはずです。
エンドユーザがシステムを利用するロケーションが異なるなら、その点も考慮したテストデータを使用してテストを行うべきです。そこで、私がこれまでに行ったeKYCのテストで使用したテストデータの一部を紹介していきたいと思います。
テストデータの事例
それではさっそく、eKYCのテストで活用できるテストデータの紹介をしていきます。
光量、光源のテストデータ
光量を調整可能な光源を使用して、本人確認書類の明るさを調整し、上限と下限の光の許容値を超えた場合の動作を確認します。券面に直接光を当てないように注意し、本人確認書類の周囲の明るさを調整できるように環境を構築します。
強い光や弱い光を照射し、本人確認書類の表示物の読み取りやすさを変化させます。これにより、「読み取れない」または「読み取り時にエラーが発生する」といった結果を得ることができます。
また、光量を数値化して調整可能な光源を用意するか、光量を計測する照度計を用いることで、テスト条件を定量的に示すことが可能となります。
上記と同様の方法で、色温度の異なる光源(電球色、白色、昼光色など)を使用することで、本人確認書類を読み取れない色温度がないかを探ることができます。
背景のテストデータ
本人確認書類を読み取る際の背景を変化させます。本人確認書類の券面と同色または類似色、デザインイラスト系、布、木目、光を吸収することを想定した黒一色の背景など、ユーザがeKYCを利用する際のロケーションをイメージしながら様々な背景を準備します。
用意した背景の上に本人確認書類を配置し、本人確認書類と背景の境目を不明瞭にすることで、「読み取れない」、「読み取りづらい」といった結果が出ないかを探ります。光源や照度など、背景以外の要素は一定のものとして、背景の影響を明確に区別するために注意します。
白とびのテストデータ
高輝度のライトなどを使用して、光を本人確認書類の一部にピンポイントで照射し、白飛びを起こした状態で撮影を行います。
住所や名前などの文字部分や顔写真など、白飛びを発生させる箇所や面積を変化させながら、本人確認書類の撮影を行います。eKYCでの読み取りが成功した場合には、本人確認書類の情報が人の目でも読み取れる状態で取得できているかの確認も必要です。
手ブレ(ピンぼけ)のテストデータ
次は手ブレのテストデータを用意したいと思います。
ここまでに紹介したテストデータについては、光源や光の角度、背景を同じにすることで再現が可能な内容でした。手ブレを起こすだけであればスマホを振りながら本人確認書類の撮影を行うことで可能ですが、毎回、同じ角度、度合いで手ブレを起こすのは困難です。そのため、テスト条件を定量的に示せず、テスト結果も曖昧になってしまいます。
そこで手ブレのデータについては、ツールを使用して作成していきたいと思います。まずは元となる手ブレが起きていない画像とガウシアンフィルタを使用可能な任意の画像処理ソフトウェアを用意します。ガウシアンフィルタは、撮影した画像のノイズ(荒れ)を軽減する効果を生む技法ですが、デメリットとして、処理をした画像のエッジ(輪郭)がぼやけてしまう欠点があります。
この特徴を利用し、元となる手ブレが起きていない画像をガウシアンフィルタを通して標準偏差の値を調整することで、意図的にエッジのブレを起こした画像を作成します。この画像をテストデータとして使用することで、手ブレの方向、度合いを定量的に示すことが可能となります。
まとめ
今回ご紹介したのは、テストデータのごく一部に過ぎません。実際の本人確認書類には擦れや傷、汚れなどがあり得ますし、また、本人のセルフィー撮影においても髪の色、化粧の程度、カラーコンタクトの有無など、さまざまな要素を考慮する必要があります。
今後もテストデータを検討する際には、システムを利用するユーザのペルソナやロケーションを十分に考慮したいと思います。