連載2回目となる今回はTestArchitect for Mobileの動作検証です。

TestArchitectは2023年夏にモバイル端末(iOS/Android)上で動作するアプリケーションを対象に機能テストが可能な「TestArchitect for Mobile」をリリースしました。モバイル端末を自動化することでWindowsアプリケーション、Webアプリケーションを1つの自動化ツールで制御することができるようになりました。

しかしTestArchitectはモバイル対応ができることだけが優れている点ではありません。TestArchitectは複数プラットホームの対応以外にもキーワード駆動型での簡単なスクリプトの作成、部分一致での画像比較、仕様変更への強さなど他の自動化ツールに無い特徴がいくつもあるため、実際に使ってみてどのようなものなのか検証してみました。

TestArchitectの特徴

1. キーワード駆動型で複雑な処理もエクセルライクにスクリプト作成できる

TestArchitectはキーワード駆動型でエクセルライクにスクリプト作成ができるため作りやすく読みやすいメリットがあります。他の自動化ツールでも簡単にスクリプトが作成できることを売りにしている自動化ツールがありますが、そういった自動化ツールでは簡単な処理だけ簡単に自動化できますが、複雑な処理になるとプログラム技術が必要になる場合が多いです。

           

TestArchitectは一貫して複雑な処理もキーワード駆動型で自動化できる点が他の自動化ツールと異なる点です。このようにキーワード駆動型を使って簡単に自動化できることで自動化習熟のハードルが下がる点がTestArchitectの良さです。自動テストの現場の問題としてテスト技術者で自動テストのアサインを検討している際にプログラム技術を持ち合わせたテスト技術者を揃えることが難しく、自動化担当者のアサインに困ることがあります。しかしキーワード駆動型を作ったTestArchitectではそういった問題の解消ができます。

TestArchitectはプログラム技術が無くてもスクリプト作成ができるため、数週間ツールを使えば現場で使えるレベルになることができます。私の考えですが自動テストは、テストを熟知しているテスト技術者が自動化担当者になることが良いと考えているため簡単に使えるTestArchitectはテスト技術者にとっても良いツールです。テスト技術者がスキルアップのため、自動テストの技術を身に着けてみたい方はTestArchitectを一度使ってみてはどうでしょうか?

自動化経験のないテスト技術者にとってスキルアップのチャンスです。

2. 複数プラットホームで自動化ができる

TestArchitectは今回対応されたモバイルの他、Windowsアプリ、ブラウザと異なるプラットホームを1つの自動化ツールで自動化することができます。そのためエクセルに登録された情報をブラウザで登録し、PCから送付したメールをスマホで確認するといった複数プラットホームを跨いだ操作も可能です。

初めて自動化ツールを選ぶ際にインターネットで良い評価の自動化ツールを選んでも、自分が自動化したい対象システムにとって必ずしも良い自動化ツールだと限りません。自動化の目的が明確でなければ、どの自動化ツールを選んでよいか分からなくなります。そういった自動化ツールに何が必要かを把握していない場合でも、TestArchitectの自動化できるプラットホームと充実したアクション数があれば、幅広い処理が自動化でき自動化することに困ることはないと言っても過言ではありません。

同じ会社でTestArchitectを使っているプロジェクトがあれば、一度借りて試してみてはどうでしょうか?自動化できることがわかるかもしれません。無料のTeam版もあるので気軽にダウンロードしてお試しください。

3. 仕様変更に強い構成

TestArchitectはスクリプト作成する際に座標指定を行わないため仕様変更に強いというメリットがあります。

座標指定を行う場合ではオブジェクトの位置変更があるとスクリプトの修正が必要になりますが、TestArchitectではインターフェース登録を行います。オブジェクトをTestArchitect内に登録し、その登録名を各スクリプトで呼出して使うためにオブジェクトのIDなどに変更があった場合にもインターフェースを取り直すことで、スクリプトに変更は発生しません。

         

オブジェクトのIDなどをスクリプトで設定して使う自動化ツールは、IDなどが変わってしまうとそのオブジェクトを使ったスクリプト全てに修正が発生することになります。こういったメンテナンス効率でTestArchitectは優れています。

インターフェースも簡単に登録することができるため、特に使いこなすことは特別な技術は必要ありません。

また共通関数も簡単に作成することができるため、複数のスクリプトで使用する同じ処理は1つの共通関数を呼出して使用できます。仕様変更があった場合にはその呼び出し元の関数を修正すれば仕様変更の対応が可能になります。

インターフェース登録と共通関数を使うことでメンテナンス効率を高めることができるため、TestArchitectは仕様変更に強い自動化ツールです。

4. ハーネス機能であらゆる対象を自動化できる

Java、C#、Pythonで作ったプログラムを取り込み、TestArchitectで呼出して使うことができる機能があります。

この機能を使うことで通常TestArchitectで制御できない処理もハーネス機能を使うことで自動化することが可能になります。これまで諦めていた自動化もTestArchitectなら自動化できるかもしれません。

またハーネス機能を使えばRaspberry Piを使った組込み系製品の制御も可能になります。

組込み系製品の自動テストは組込み系製品を自動化するためのツールを作ることが技術的なハードルが高く自動化の実績が少ないですが、TestArchitectのハーネス機能を使うことでRaspberry Piを使い組込み系製品を自動化することが可能になります。Raspberry Piと連携できるハーネス機能と幅広いプラットホームを自動化できるTestArchitectを使えば、複数のシミュレータ機器を使ったIoT機器の自動化も可能になります。

他の自動化ツールでも工夫しシミュレータなど外部機能と連携することで、同様の幅広い機能で自動化ができますがこのやり方では大きな問題が発生します。1つの自動化ツールで複数の外部機能と連携する場合、構造が複雑になり実行エラーが発生した場合のエラー原因の特定が困難になります。運用担当者は必ずしもスクリプト作成者ではないため、自動化システムの構造を詳しく理解していない場合が多く、問題が発生した際に複雑な構造では原因特定が難しく実運用に問題が出ることが出てしまいます。

一方、TestArchitectは全ての機能を1つのツールで制御するため構造が複雑にならず、1つのツールのログからエラーを特定することが可能になります。自動化できる幅が広がるためのハーネス機能の特徴ですが、1つの自動化ツールで複数のシミュレータなどの外部機能と連携した自動化対象の構造を簡素化できるという特徴もあります。

5. スクリプトの構成が整理しやすい

TestArchitectではテストモジュールには役割別に4つの区分が準備されています。

それぞれの区分で実行する処理を分けることで、可読性が高まり担当者が抜けたことでメンテナンスができなくなり自動テストの運用が止まってしまう可能性は低くなります。もともとキーワード駆動型で作りやすく理解しやすい自動化ツールのため、4つの区分があることでよりわかりやすく使いやすい自動化ツールになります。その区分に合わせてスクリプト作成するだけでコーディング規約に合わせたような一定の品質のコーディングができます。

6. 高度な画像判定ができる

一般的な自動化ツールでは画像一致の自動テストは実用面ではあまり使い勝手がよくありません。

その理由は画像判定をピクセル単位の一致で行っているため、誤判定が多いためです。

しかしTestArchitectはKey-Pointを用いて抽出した特異点と一致するものを画像内にあるか判定することができます。そのため完全一致ではなく部分一致での判定が可能です。デジタルカメラで取得した画像を使った画像判定を行うと少しの位置のずれ、画像ノイズが入ることから完全一致では判定は不可能です。

その点Key-Point技術を用いた画像判定を行うとデジタルカメラで取得した画像の一致も可能になります。デジタルカメラでの確認が可能になることから、組込み系製品でのテストにも使うことができます。

        

画像チェックの自動化はこれまでオブジェクト認識ができなかったときの最後の手段として使っていましたが、部分一致が可能になると使い方が変わるため自動化の幅が広がります。

7. 自動化ツールのライセンス価格が非常に安い

自動化ツールの購入を検討する場合、重要視するポイントは自動化ツールの価格ではないでしょうか。

社内の予算を通すには価格の高い自動化ツールでは、苦労が予想されます。やっと予算を通してもそれが現場で使えなければ、大きな問題になります。

しかしTestArchitectは他に自動化ツールと比べても価格が安く、実行するだけの「Run Only」であれば年間9万3千円で使えます。スクリプト作成・編集可能な「Enterprise」でも年間44万9千円で使うことができます。

他の自動化ツールと比べても価格が低く、多機能な自動化ツールは他にありません。

お客様に中にも「TestArchitectはこれだけ多機能でなぜこれほど価格が安いのですか?」という声もよく聞きます。自動化ツールの購入の重要ポイントである価格が安いという点だけでも、ツール購入の選択肢に入れておく価値があると思います。このTestArchitectという十分な機能が揃った自動化ツールが実行だけなら年間9万から使えるというだけでも、作業者を雇うことを思えばかなりコスト面でのメリットは出てきます。かなりお買い得だと思います。

8. 自動化対象に合わせてカスタマイズ可能

どうしても他の自動化ツールで自動化できないこともTestArchitectであれば、カスタマイズを行うことで他の自動化ツールでできないことも自動化がすることができます。

Linux環境で充実した自動テストを行うことができる自動化ツールを探すとなるとなかなか良いものが見つからず、自動化断念となりかねません。

特殊な環境の合わせた自動化ツールを作成しようにも、新たに自動化ツールを作るために必要となる技術も高いものが求められるため、簡単に自動化ツールを作成しようと踏み切れるものではありません。

そういった問題があってもTestArchitectは環境に合わせたカスタマイズができるため、自動化対象に合わせた自動化ツールにすることができます。もし求める自動化ツールが探しても見つからない場合はTestArchitectのカスタマイズを選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?

纏め

TestArchitectの優れた点ばかり説明してきましたが、1点他の自動化ツールに比べて劣っている点があります。

それはTestArchitectの知名度が無いことです。このような価格が安く実用的な自動化ツールが世間に知られていません。

日本以外の国で10年以上の実績がありますが、日本での導入はごく最近の2020年頃からです。海外では実績もあり販売台数も多い自動化ツールですので、日本で知名度が無いことは問題ではありません。日本ではこれから実績を作っていく過程であるため現在は知名度が無いという状態です。

TestArchitectを検証したところ自動テストの現場の様々な問題を解決できる高い実用性を備えた自動化ツールであることがわかりました。他の自動化ツールに無い特徴を持った様々な機能を揃え、いろんな場面で活用することができ、しかも使いこなすことに高いスキルを必要としない自動化ツールは他に無いものだと思います。

気になった人はTeam版であれば無料で使えるため、TestArchitectを試してみてください。

連載一覧

【第1回】自動テストはなぜ失敗するのか?
【第2回】TestArchitect for Mobileの動作検証
【第3回】自動テストの成功基準|6つのポイントをチェックする

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SQRIPTER

林 尚平(はやし しょうへい)

株式会社AGEST ITソリューション営業本部 テストオートメーション営業部

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10年以上前よりテスト自動化を経験し、車載器や医事会計システムなどの組込み系や業務系のテスト自動化を行い、ソフト品質の確保やリリーステストの効率化を実現。
現在は株式会社AGESTにてテスト自動化エンジニアとして活動中。

著書「ソフトウェアテスト自動化の教科書 〜現場の失敗から学ぶ設計プロセス」(技術評論社)

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