
QAエンジニアとして、日々の業務に取り組む中で、ふと孤独を感じる瞬間はありませんか?
もしかしたら、「この問題意識を持っているのは自分だけだろうか」「この改善に取り組もうとしているのは、もしかして私一人なのではないか」と感じてしまうことがあるかもしれません。
そう感じているのはあなただけではないと私は断言できます。
もしあなたが今、孤独を感じているとしても、あなたは一人ではありません。
世の中には、同じように悩み、学び、高め合おうとしている仲間がいます。
本記事では、QAエンジニアとしてのキャリアをより豊かにするための最終話として、仲間を見つけることの意義と、コミュニティやイベントがもたらす価値についてお伝えしたいと思います。
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コミュニティやイベントという存在
もし、あなたの所属する組織の中に、心を開いて話せる仲間がいないと感じるならば、思い切って社外に目を向けてみることをおすすめします。
幸いなことに、QAやソフトウェアエンジニアリングの領域には、様々なイベントやコミュニティが存在します。
これらの場は、新しい知識や技術を学ぶいい機会となります。
そして、同じ志を持つ人々と出会い、繋がり、「私は一人ではない」という確かな実感を得られる、非常に価値のある場所です。
コミュニティで得られる豊かな学び
コミュニティに参加することで得られるものは、単なる情報交換だけではありません。
そこには、あなたのQAエンジニアライフをより豊かにしてくれる、大切な要素が詰まっています。
正統的周辺参加
例えば、コミュニティの場に身を置くことは、「正統的周辺参加」と呼ばれることがあります。
これは、積極的に発言したり、中心的な活動に参加したりしなくても、その場の雰囲気や会話、他の参加者の様子から、自然と多くの学びや刺激を得られるという考え方です。
周囲の人たちの議論を聞いたり、他の人がどんな課題に悩んでいるかを知るだけでも、多くの気づきがあるはずです。
そうした経験を重ねることで、徐々にコミュニティの中心的な活動へ関われるようになっていく、それが正統的周辺参加という考え方です。
第三の居場所
また、コミュニティは、家庭でも職場でもない「第三の居場所」となり得ます。
普段の業務から離れて、共通の興味や課題について気兼ねなく話し合える場所があることは、いいリフレッシュの機会になります。
自分と同じ状況にいなくても、同じような課題や技術を通じて、同じような学びを持つ人たちが集まり、お互いにゆるやかに支え合う場として、コミュニティに参加することは自分のキャリアを充実させるために必要な要素の一つだと考えています。
仲間の存在があなたを引き上げる
コミュニティで出会う人たちは、あなたの成長を後押ししてくれる存在です。
同じように品質向上やいいソフトウェア開発を目指して努力している人たち、自分にはない知識や経験を持つ人たち、そして何よりも、あなたの取り組みや悩みに共感してくれる人たちと出会うことができます。
仲間の活躍を見て刺激を受けたり、彼らの視点やアプローチから新たなアイデアを得たりすることもあるでしょう。
仲間の存在が、まるで自然な力のように、あなたをより高いレベルへと引き上げてくれることを実感できるはずです。
コミュニティ参加における注意点
コミュニティに参加することは非常に有益ですが、いくつかの注意点もお伝えしておきたいと思います。
内輪ノリと感じてしまう
まず、初めて参加するコミュニティでは、最初は少し居心地の悪さや内輪感を感じてしまうかもしれません。
既に仲の良いグループによる「その場のノリ」ができているように見えたり、話についていけないと感じたりすることもあるかと思います。
これは多くの人が経験することです。
そのような場合でも、気後れしたり斜に構えたりせず、まずはその場の雰囲気を観察し、楽しんでみることをおすすめします。
楽しんでいるうちに、自分自身が気になることもなくなる経験を私はしました。
現場を手放さない
次に意識したいのは、コミュニティでの活動を通じて、普段の自分の仕事を充実させることです。
コミュニティの活動自体を楽しむことも大事ですが、そこで得た学びや刺激を、現場で実践することも重要です。
参加していく中で、「自分の現場ではどのように活かせるだろうか」と考えながら参加することは、より楽しむための有意義な視点でもあります。
現場を悲観的に捉えない
最後に、コミュニティで他の組織や個人の話を聞いた際に、自分の所属する現場と比較してしまいがちになる点には、注意が必要です。
これは、「エンジニアのはしか」※と言われることもあります。
※参考記事:
「エンジニアのはしか」について|意欲ある若手が陥りやすい?それを乗り越えるには?
「社外の人たちはこんなにキラキラしているのに自社はだめだ」と思ったり、「自分の会社の人は意識が低い」と思ってしまうことがあるかもしれません。
こういった感情を持つことは、実は多くのエンジニアが経験しています。
そして、後になって恥ずかしいと思っている人が多いです。
私もそうです。
「隣の芝生は青い」ということわざがあるように、現場と離れている非日常のコミュニティで話すからこそ、実際よりもキラキラしているように見えているのかもしれません。
しかしながら、キラキラしている人の話を聞いてみると、実際には自分とそう変わらない難しい現場で泥臭くもがいた結果であることも少なくありません。
私が大切にしていることは、「現場ときちんと向き合う」ということです。
「社内の他の人」がいるとして、その人がどのような気持ちで働いているのか、どのような考えを持っているのかについて、社外コミュニティの人と接するのと同じように興味を持ち、共感することです。
そういった中で、「自分は現場の中でどう違う思いを持っているのか」「そんな中で自分は現場でどう貢献できるのか」を真剣に考えることが、私はコミュニティを有効活用する手段だと考えています。
仲間を探せる場所
具体的にどのような場所で仲間を見つけられるのでしょうか?
まず、テストコミュニティがあります。これはQAやソフトウェアテストに特化したコミュニティで、専門的な知識や現場の課題について深く話し合うことができます。
例えば、JaSSTというソフトウェアテストシンポジウムやWACATEといったソフトウェアテストに関するワークショップがあります。
これらは一見すると敷居が高いように見えますが、むしろ初参加の人を歓迎したいと思っている人たちが運営していることは断言できます。
私もtestingOsakaという大阪のテストコミュニティを運営していますので、ご近所の方はぜひ参加してほしいと思っています。
ソフトウェアテストだけでなく、開発コミュニティに参加するのも非常に良い経験になります。 ソフトウェア開発のプロセス全体への理解を深めることは、QAエンジニアとしての視野を広げ、開発チームとの連携を強化するためにも重要です。
「自分はQAだから開発コミュニティは場違いかも…」と思うことがあるかもしれませんが、意外とそんなことはありません。
私の経験では、「テストの専門家」として話すだけで、良い意味で個性を出すことができます(キャラ立ちします)。
そして、そんな開発系コミュニティの中で、ちょっとしたテストに関する話をするだけで、「参加できてよかった」と言ってくれる人がいます。
私はそんな人が1人でもいるだけで、参加する価値はあると思っています。
イベント告知サイトで「QA」や「テスト」といったキーワードや興味のある内容で検索してみると、多くのコミュニティやイベントが見つかるでしょう。
オンラインで開催されているものも多いので、まずは気軽に参加してみてはいかがでしょうか。
おわりに 〜そして現場と向き合う〜
現場にいると、時に困難で、孤独を感じることもあるかもしれません。
しかし、あなたは一人ではありません。同じように悩み、学び、成長しようとしているたくさんの仲間がいます。
コミュニティやイベントは、そうした仲間と出会い、繋がるための素晴らしい機会です。
そこで得られる繋がりや学び、そして何よりも仲間の存在は、あなたのQAエンジニアライフをより豊かにし、困難を乗り越える勇気を与えてくれるでしょう。
そして、コミュニティを通して、自分の現場についても同じように向き合ってみてください。
また違った視点で現場と向き合えたり、もしかしたら気づかなかった仲間に出会えるかもしれません。
社外のコミュニティに参加する良さとは、社内に対して新しい視点を得られることだと私は考えています。
QAエンジニアとして充実させるために、繰り返し伝えたいのは、現場に目を向けるということです。
学び続け、仲間と共に、より良い製品を顧客に届けるという目的に向かって、それぞれの現場で頑張っていきましょう。
そしていつか、コミュニティで皆さんとお会いできることを楽しみにしています。