品質を制する者は市場を制す?サービス改善のためのドッグフーディング戦略

こんにちは。プロダクトチームで品質改善に取り組んでいる、QA Maestro K.O.と申します。

自社製品やサービスの売上げを伸ばす方法について悩み、日々奮闘している企業は多いのではないでしょうか。

競争が激化するビジネス環境において、ユーザーの期待を上回る品質は市場を制する鍵になり得ます。

自社が提供するサービスを自らが使用し、その品質を常に向上させることは、顧客満足度向上に繋がり、競争優位性を築く秘訣となるでしょう。

この記事では、サービスの品質向上のための有効な施策の一つである「ドッグフーディング」について詳しくご紹介します。

また、QAエンジニアが行うドッグフーディングについても記載しました。

売上にお悩みの方や、製品の価値を高めたいQAエンジニアの方のご参考になれば嬉しく思います。

ドッグフーディングとは

ドッグフーディングとは、製品やサービスの開発者や内部関係者が、自らが開発した製品を実際に使用し、評価するプロセスです。つまり、開発者や関係者が、自分たち自身で一般のユーザーと同じように製品を利用し、その品質や性能を評価し、改善に役立てることを指します。

「ドッグフーディング」という名前の由来

由来は諸説あるようですが、ドッグフードの販売を手がける企業の社員が、自分が飼っていた犬にドッグフードを食べさせていたというエピソードが語源と言われています。

その後、Microsoftの従業員の一人が、自社の製品を自分たちで使うアイデアを説明する際に「Eating our own Dogfood」という比喩的な表現を用いたことから、「ドッグフーディング」という用語が社内で広まり、「ドッグフーディング」は内部での製品使用と評価を指す言葉として広く受け入れられるようになりました。

では、自社製品やサービスを自ら利用することにどのような意義があるのでしょうか。

ドッグフーディングのメリット

ここでは、ドッグフーディングを実施するメリットとして広く知られているものをいくつかご紹介していきます。

製品品質と顧客満足度の向上

開発者や企業内のステークホルダーが日常的または正式リリース前に自社の製品を利用することで、ユーザーエクスペリエンスにおいて発生する潜在的な問題や改善点を直感的に把握できます。

これにより、不具合や改善点を事前に発見し、顧客がより満足するであろう製品品質に近づけることができます。

高い品質を備えた製品はユーザーに信頼感を与え、顧客満足度の向上も期待できるでしょう。

また、製品の品質や顧客満足度の向上は、競争の激しい市場で競合他社との差別化を図るための重要な要素となります。

競争優位性の確立

自社の製品を積極的に利用することで、他社製品との差別化ポイントや自社製品の優れたユーザーエクスペリエンスを見つけ出しやすくなります。

たとえば、競合他社の製品よりも高速で信頼性が高く、使いやすい新しいスマートフォンを開発した場合、この製品は競争優位性を持つこととなります。

また、競争力のある製品を提供することで、市場での価格競争を回避し、付加価値を提供することも可能となるのです。

このように、ドッグフーディングによる自社製品の品質や顧客満足度の向上は、製品の信頼性や競争力が向上するなど、ビジネスの長期的な成功へ大きく影響し、市場での成功を支える要因となります。

品質向上以外のドッグフーディングのメリット

品質向上以外にも、ドッグフーディングにはさまざまな利点が存在します。

従業員やステークホルダーが製品を自身で使用することにより、製品に関する理解が深まり、マーケティングやカスタマーサポートなどの役割においても、より効果的にユーザーに対応できるようになります。

また、実際に使い込むことで自社製品に対する愛着やコミットメントが高まり、各部門が一体となって製品の成功に貢献することも期待できるのではないでしょうか。

このように、ドッグフーディングは製品やサービスに多くのメリットをもたらす重要な取り組みであるといえます。

QAエンジニアが行うドッグフーディングについて考えてみた

品質管理の専門職であるQAエンジニアは、製品品質やユーザーエクスペリエンスの最適化を目指すドッグフーディングとの相性が良いと考えられます。

QAエンジニアがドッグフーディングを行う利点

テストや品質管理などを得意とするQAエンジニアがドッグフーディングを行うと、以下のような効果が期待できるでしょう。

  • バグと改善点の早期発見 QAエンジニアが製品を実際に使用することで、一般ユーザーが遭遇する可能性のあるバグや課題の早期発見がしやすくなるでしょう。 これにより、開発段階での修正が行いやすくなり、リリース後のトラブル減少に貢献することができます。
  • ユーザーエクスペリエンスの最適化 QAエンジニアはユーザーエクスペリエンスを向上させるための提案や改善点の提供を得意としています。 質の高いフィードバックにより、製品の使いやすさや顧客満足度の向上に寄与することが可能です。
  • テストケースの充実 QAエンジニアが実際に製品を探索的に使用することで、予め用意することが困難なテストケースやテストシナリオを作成し、テストカバレッジを増やすことができます。 このことは品質保証の精度向上につながり、製品の信頼性を高めることに貢献します。

将来のQAエンジニアリングとドッグフーディングの可能性

将来においてQAエンジニアとドッグフーディングの関係にはどのような可能性が考えられるでしょうか。

QAエンジニアリングの業界でも、今後、AIや自動化技術を活用したQAテストツールの進化が期待されていますが、これらのツールでユーザーエクスペリエンスを担保することは難しいのが現状です。

したがって、QAエンジニアがユーザー視点からソフトウェアを評価し、フィードバックを提供する役割は重要であり、QAエンジニアが新しいテクノロジーを活用した品質保証を行う未来においても、ドッグフーディングは不可欠な要素となることが予想されます。

また、ユーザーの多様なニーズに対応するために、QAエンジニアがソフトウェアやサービスを多角的に評価し、改善を推進する役割としての需要も将来的に増していくでしょう。

では、ドッグフーディングを効果的に実施するためにはどのような点に注意するとよいのでしょうか。

ドッグフーディングの実践に向けて

これまでも紹介してきた通りですが、実際に製品を利用し、その使用体験からフィードバックを得ることはドッグフーディングの中核的な要素です。

ここでは、効果的なドッグフーディングを実施するための要素をいくつかご紹介します。

ユースケースシナリオの検討

ドッグフーディングを行う際には、製品やサービスの様々なユースケースやシナリオを検討することも重要な要素となります。

異なる利用状況での振る舞いや問題点を特定し、幅広いユーザー層の要求に適合するように改善を行うことが可能になるためです。

ユースケースの多様性を考慮することで、製品の汎用性を向上させることができます。

レアケースのテスト

こちらは優先度は低くなることが多いですが、通常のユースケースシナリオだけでなく、稀なケースや特殊な状況に対するテストを意識的に行うのもよいと思います。

一般的でない問題やエッジケースでのバグを特定することは、製品の信頼性と安定性を高めるために必要なステップとなります。

たとえば、モバイルアプリケーションのドッグフーディングでは、通信状況が不安定な地域での利用などがこれにあたります。

チームへのドッグフーディングの普及

ドッグフーディングを個人で行うのもよいのですが、チーム全体で実施するとより大きな効果が期待できます。

チームでの実施により、より多くの視点と洞察を得ることができ、多角的な評価と改善を行いやすくなるためです。

ドッグフーディングの重要性をチームメンバーに伝え、定期的なドッグフーディングセッションの企画・ユーザーフィードバックの収集を行うなど、積極的な参加を促す工夫をすることが成功の鍵となります。

ドッグフーディングの継続と改善

ドッグフーディングは一度だけの実施ではなく、継続的に取り組むことが重要です。

フィードバックと改善のサイクルを確立することで、製品やサービスを継続的に進化させていくことが可能となるためです。

このサイクルを継続することで、ユーザーの期待に応じつつ、製品品質と競争力の継続的な維持に寄与できます。

これらの要素から自分のチームの状況に合ったものを取り入れ、実践的なドッグフーディングプロセスを構築することで、成功へ一歩近づくことができるはずです。

ドッグフーディングの課題点

ドッグフーディングを行うことで多くのメリットが得られる一方、注意すべき点も存在します。

製品やサービスの開発チームでドッグフーディングを行う場合、仕様を理解していたり、現在の仕様になるまでの経緯を知っていることで先入観が生まれ、初見のユーザー視点での改善点が挙げづらくなることがあります。

また、ステークホルダーなどの従業員から集まったフィードバックが、一般のユーザーや顧客の期待とは異なる可能性もあります。

このように、ドッグフーディングにはバイアスの問題が存在することには注意が必要です。

バイアスを軽減するためには、多様な従業員の選定や外部ユーザーのフィードバックを取り入れることが重要です。

開発チーム内で実施する際には、開発完了してから少し時間をおいたり、類似プロダクトを触るなどした後、改めて自社製品を触るとバイアスが軽減され、改善点を挙げやすくなるかもしれません。

ドッグフーディングの小ネタ

最後に個人的に効果があった、テスト業界の知識がなくても誰でも簡単にできるドッグフーディングの小ネタを紹介して、今回の記事を終わりにしたいと思います。

それは「サービスを使った作業をタイムアタックで行う」というものです。

たとえば、Webアプリケーションのドッグフーディングを行う場合を考えてみましょう。

Webアプリケーションは、基本的には業務などを効率的に行うために作られるサービスです。

ということは、手早く作業ができるWebアプリケーションは使い勝手がよいと評価されやすく、つまり、短時間で作業を完了させようとした際に、操作に迷ったり面倒な操作があれば、それは改善ポイントとなる可能性が高いというわけです。

対象のシステムにも依りますが、

  • ショートカット的な機能が欲しい
  • ボタンの配置がこうなっていれば、もっと早く操作できるのに
  • この機能は頻繁に使うから、もっとレスポンスを…!

というような改善点を挙げやすくなります。

とても簡単なことですが、意識するのとしないのでは改善点の気付き方も大きく変わってくると思います。気になる方は是非試してみてください。

おわりに

ドッグフーディングは、自社製品やサービスの品質を改善する強力な手段の1つです。

競争が激化するビジネス環境において、ユーザーの期待を上回る品質は市場を制する鍵になり得ます。自社が提供するサービスを自らが使用し、その品質や顧客満足度向上に繋げるドッグフーディングは、このような状況下で非常に効果的なアプローチとなります。

ドッグフーディングは、製品やサービスの改善だけでなく、従業員が製品に関する理解を深め、各部門が協力して製品の成功に貢献する効果も期待できるでしょう。

この記事がドッグフーディング導入のきっかけとなったり、自社製品やサービスの開発に携わる方々の参考になれば幸いです。

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