ソフトウェア開発の世界では、アジャイル開発やスクラムが一般的になってきました。そのアジャイル開発のコアとも言えるのが、対話や協調です。このシリーズでは、アジャイル開発におけるコミュニケーション・コラボレーションスキルを解説しながら、ファシリテーションスキルのレベルアップを目指します。

初回のテーマは「優れたスクラムマスターが絶対に言わないこと」です。

アジャイルになれない現場のコミュニケーション

私はアジャイルコーチとして、アジャイル開発の現場を支援する仕事を、はや14年以上続けています。よって、様々な現場を見てきたつもりですが、アジャイルになりきれていない現場でのコミュニケーションには、共通する点が多くあります。そのなかでも比較的よく聞く言葉を選ぶとすると、以下のようなものが浮かびます。

  1. 「〜さんがこう言っていた」
  2. 「すごく困っている」
  3. 「なんでこういう事を聞いたかというと・・・」

1 については、現場にいない人の話をしています。誰かの言った(であろう)言葉の意図を、正確に理解するのは至難の業です。

2 については、困り具合が曖昧です。この人の「すごく困っている」はどれぐらいの度合いなのでしょう? 1時間困るぐらい? 1日困り続けるぐらい? もしかして一生?

3 については、この言葉の前に質問や確認があったことが想定できます。なぜこの人は、理由や意図をもったいぶって先に説明せずに、質問や確認を行ったのでしょうか?

優秀なアジャイルコーチやスクラムマスターは、上記のような言葉は使いません。なぜなら、どれも非効率なコミュニケーションの言葉だからです。

アジャイル開発において、コミュニケーションはとても重要な要素のひとつです。それなのにわざわざ非効率な方法を選ぶ必要はないでしょう。ましてやエンジニアも非効率から効率を作り出すのが職務と言えます。こちらもわざわざ遠回りする方法を選ぶ必要はないでしょう。

細かい点かもしれませんが、こういった小さな言葉の使い方の違いが、大きな認識の違いを生み出します。

アジャイルなふるまい

スクラムマスター、スクラムチーム、アジャイルチーム、アジャイルコーチ・・・。アジャイル開発に関わる人達には共通する「ふるまい」があります。

アジャイル実践者は「個人やチームの自律」を目指そうとするので、「〜しなさい」といった命令をしたり、「進捗どうですか?」のような管理的な言葉をあまり使いません。必要な場合だとしても最低限にするでしょうし、将来的になくしていく努力を進めているはずです。

これと同じく、スクラムを推進するスクラムマスターや、アジャイル開発全般を支援するアジャイルコーチにも似たような「ふるまい」があります。

これが「スクラムマスターのためのコミュニケーション講座」で学んでいくテーマです。

ふるまいは身のこなし方であったり、言葉であったりします。これらを学びながら、よりよいコミュニケーション・コラボレーションスキルを身に着け、スクラムイベントなどでのファシリテーションスキルを身に着けていきます。

この講座の内容

この講座では、以下の内容を中心に解説を行っていきます。

  1. ファシリテーション技術
  2. コーチング技術
  3. 1on1技術

「ファシリテーション技術」はその名の通り、この講座のメインとなるスキルです。なんとなく「こういうもんだろう」とファシリテーションを行っている人は多いでしょうが、ファシリテーションについてはさまざまな書籍や解説書、トレーニングがあるように、体系立てて学べる部分も多くあります。ここでは「なんとなく」を「ロジカル」に変えるための解説を行っていきます。

「コーチング技術」はファシリテーション技術と同じく、この講座のメインとなるスキルです。ファシリテーションといえばMTGなどの司会者のイメージがあるでしょうが、コーチングの主要技術もファシリテーションに有効活用できるものばかりです。純粋なコーチング技術の中から、スクラムマスターやアジャイルコーチに役立つ部分を解説していきます。

「1on1技術」は、スクラムマスターやチームメンバーの育成に利用できる技術です。今では多くの現場で取り入れられている手法ですが、実際にやってみるととてもむずかしい方法であることがわかります。この難しさを分解し、もっと効率的な1on1の方法を考えていきます。

これ以外にも、「様々なコミュニケーション方法とその使い分け」や将来的にスキルを高めていく「コミュニケーションを鍛えるトレーニング」についても解説する予定です。

「様々なコミュニケーション方法とその使い分け」では、我々が何気なく使っているコミュニケーションの種類を整理し、それぞれの特徴を解説します。コミュニケーションの方法は、その特徴に合わせて、さらに相手に合わせて使い分ける必要があります。どのように使いこなすのが効果的かを解説していきます。

「コミュニケーションを鍛えるトレーニング」では、ここまで学んできた技術をより高めるための方法を考えていきます。この講座ではさまざまなテクニックや経験談を語る予定ですが、その場で理解できても、どう使っていけばいいか迷うこともあるでしょう。実際の現場でも活用できるように、筆者が経験したトレーニングや、自分のチームでも明日からできるスキルアップ方法を説明していきます。

この講座の対象読者

この講座の対象読者は以下になります。

  1. スクラムチームを支えるスクラムマスターや、スクラムマスターを目指す方
  2. アジャイル開発支援全般ができるアジャイルコーチや、アジャイルコーチを目指す方

私はプログラマからキャリアを積んできましたが、新卒研修やOJTでプログラミング言語は学んだことはあっても、仕事の現場で使えるコミュニケーション方法を学ぶことはありませんでした。多くのエンジニアも私と同じなのではないでしょうか?

我々は仕事に限らず、人生の多くの時間をコミュニケーションに使います。よって、ソフトウェア開発に関わるすべての人たちが、この講座の対象読者とも言えます。

アジャイルコーチの仕事はさまざまです。単純にアジャイル開発やスクラムを教えるだけでなく、アジャイルプラクティスを教えるだけでもなく、アジャイルなふるまいができる人を育てなければなりません。そうしなければ、アジャイルコーチに依存する現場が生まれてしまうからです。

私が支援する現場では、それぞれの状況に合わせて勉強会という名のトレーニングを行ったりもします。トレーニングは、アジャイル開発をやるうえで、つまづきやすい部分にスポットライトを当てるケースが多く、人気のものだと「見積もりと計画づくり」、「効果的なインセプションデッキの作成」「アジャイルQAのための品質改善」などがあります(一部はUdemyでも公開しているのでご興味があればどうぞ)。

今回のこの講座の土台になっている「チームが自走するためのコミュニケーション入門」は、一番人気のトレーニングです。このトレーニングは支援先で行っているオンライントレーニングなのですが、エンジニアだけでなく、ビジネス側にも人気で、アジャイルチームとのコミュニケーションの取り方だけでなく、そこからアジャイルな考え方を学んでくださっています。

この講座を進めながら「なんとなく」だったコミュニケーションを、「よりよい」コミュニケーションにするために、一緒に学んでいきましょう!

次回はスクラムイベントで一番使うであろう「ファシリテーション」の解説です。

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SQRIPTER

藤原 大(ふじはら だい)

スーパーアジャイルコーチ、株式会社せかい 代表取締役

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スーパーアジャイルコーチ、エンジニアリングマネージャ、『リーン開発の現場』の翻訳者のひとり。創造的、継続的、持続的なソフトウェア開発の実現に向けて奮闘中。週末に娘と息子とお昼寝しながら世界のビーチや離島を旅する夢を見る。

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