ITエンジニアの仕事を楽しくする知的生活

この連載では、ITエンジニアにとって親和性が高く「スキルアップしたい」と思う方にとっては役に立つであろう知的生活について、いろいろなアクティビティやツール、仕事での活用方法などについてご紹介します。知的生産・知的生活の考え方や、「そもそも知的生活とはどうあるべきか」等の話ではなく、できるだけエンジニアの普段の生活や仕事に役立てられるテクニックよりの話をするつもりです。

前回の記事では、知的生産・知的生活とは何かや、エンジニアにとってなぜ必要なのか等について触れました。

その中で、知的生産を単純化したモデルとしての

インプット→処理→アウトプット

という形が登場しました。

今回は、とくにインプットとその後の処理に重要となる、知的生活の母艦としてのツールについて紹介します。

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知的生活の母艦とは

前回の記事で、私は”知的生産”を

アウトプットである「なにかあたらしい情報や価値」を出すために、いろいろなインプット=情報をあつめて、自分の頭やいろいろな道具を使って処理=思考をすること

とし、この知的生産を日常生活の中に取り入れ、ひとつの楽しみとして行うことが”知的生活”であると考えていると書きました。

なんらかのインプット、たとえば読書やインターネットでの調べ物などを行って得た情報を元にしてあたらしいことがらを生み出す処理をする。
この過程では、インプットした情報をためておくところ、それも、できるだけ処理の都合がいいようにためておくところが必要になります。

人間は、一度見聞きしたものをすべて記憶しておくことはできません。なにか情報をインプットしたとしても、頭で記憶しておくだけではいずれ忘れてしまいます。それでは、何か新しいことを生み出すための材料として使えません。

そのため、知的生活と、情報をためておく行為およびその道具とは不可分な関係にあります。

情報を記録し、あとで処理しやすいようにためておく。

コンピューターが普及する以前には紙を中心に記録と整理を行う手法もありましたが、現在ではさまざまなデジタルツールがあるため、PCやスマートフォンのアプリケーションを用いるのが一般的となっています。

この、情報をためておきつど見返すためのツールを、ここでは知的生活の母艦と表現しています。思考のホーム、などと表現をする方もいますが、「自分がインプットした情報は基本的にここにある」という場のことを意味しています。

読書メモや仕事中に同僚からもらったアドバイス、Googleで検索をしてなにかのエラーを解決した際の記録などがいろいろなツール・場所に散らばっていると、「前にメモしたアレどこだっけ・・・」となるのは明らかです。
また最終的に何かあたらしいことがらをアウトプットするには、インプットした情報Aと別のところからインプットした情報Bを組み合わせて発想する、ということもよく行われます。

このように、情報が母艦という一箇所にまとまっていることで

  • 探す場所に迷わずに済む
  • 情報どうしのつながりによって発想が得られる

という、情報を「貯める」ことと「生み出す」ことの両面にメリットがあるのです。

ツールの種類と選び方

そのような知的生活の母艦、すなわちインプットした情報をためておくための場所・ツールは、個人の好みや使い勝手に応じていろいろな選択肢があります。

極論としては「お好きなものを使いましょう」になるのですが、それでは迷ってしまうので、ここではいくつか選び方・具体例について紹介します

選ぶポイント1:クラウドサービス、もしくはクラウド同期があるか

クラウドサービス、もしくはクラウド同期が可能なツールはPC・スマートフォン・タブレットなどさまざまな環境から同じデータにアクセスでき、知的生活の大きな支えになります。

発想やアイデアは、いつでもどこでもメモできる状態にあることが重要です。「何探してたんだっけ」「何ググろうと思ってたんだっけ」という経験、ありますよね。

特定の道具、特定の環境でしかメモできない状態では、アイデアが飛んでしまいます。紙にメモしておいてあとでツールに転記することもできますが、多くの場合面倒になってメモしなくなります。

クラウドサービスもしくは同期機能のあるツールを使うことで、メモをスマートフォンでとっておいてあとからPCで整理や追記をする、といった使い方が可能です。

昨今の代表的なツールとしては、

  • Notion
  • Cosense(旧Scrapbox)
  • Obsidian
  • Logseq
  • Dynalist
    などが挙げられます。

逆に、クラウドサービスでないローカルアプリケーションで、クラウド同期をしないで使えるツールが必要な場面もあります。

たとえば職場では、個人のクラウドサービスをそのまま使うことはNG、という場合も多いでしょう。仕事上のナレッジをためておきたいけれども、会社標準のクラウドツール以外は申請が面倒・・・という場合は、ローカルでのみ動作するツールを選択するのも手です。

選ぶポイント2:蓄積する情報や形式

ポイント1で挙げたツールには、それぞれ蓄積する情報や形式によっての得手不得手があります。

たとえばNotionなどは、ツール内部でデータベースを作ってかなり自由度の高い表示ができます。Cosenseは情報=ページ間のつながりを簡単に作成できるのが特徴で、蓄積した情報間の思いがけないつながりが見えるなど、情報同士を組み合わせて新しい価値を生み出すのに向いています。

Cosenseの例として、私が(最近は編集していませんが)公開しているCosenseのページをご覧いただくと、少しイメージがつかめるかもしれません。
いとうよ式.out

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SQRIPTER

伊藤 由貴(いとう よしき)

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テスト自動化エヴァンジェリストとして、エンジニア育成・テスト自動化コンサルテーション・部署の立ち上げ・マネジメントなどを経験。
現在は複数Webサービスを運営する会社の横断部門にて、QAエンジニアとして活動中。

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