こんにちは。クオリティマネージャーのおすぎです。

「段取り八分、仕事二分」という言葉があります。
仕事の事前準備の大切さを表すもので、仕事に取り掛かる前にきちんと段取りを済ましておくことで仕事の8割は完了している、という格言です。
段取りはプロジェクトマネジメントにおいても非常に重要になります。

蛇足ですが「段取り」の語源をネットで調べると

作業の順序や方法を定めたり必要に応じて手配をしたりすることで、歌舞伎の楽屋用語からきているとされています。「段」とは一区切りや一幕のことで、芝居の筋や構成の運びを段取りと言う。 

だそうです。

プロジェクトの成功率

一般的に「プロジェクトの成功率は30%」と言われています。

成功の基準は一旦脇に置きますが、例えばJUASが発行している※1企業IT動向調査報告書 2023」を見てみると、予定工期を守れたプロジェクトは、100人月未満のプロジェクトの場合で全体の3割程度になっています。

プロジェクトの規模が大きくなればその割合はさらに減る傾向にあるようです。

一昔前のプロ野球なら3割打てれば一流打者と言われたものですが、プロジェクトマネジメントも3割の確率で成功させれば一流の証になるのでしょうか???

どうせやるなら3割と言わず10割を目指したいですが、自分の担当するプロジェクトがその3割の成功プロジェクトに仲間入りできるのかどうかは、この「段取り」にかかっていると言っても過言ではありません。

今回はプロジェクトを進める上で「段取り」がもたらすメリットと、私が「段取り八分」を実現するために実際に意識していることをご紹介します。

「段取り」に期待するメリット

プロジェクトを段取り良く進めることで様々なメリットがあると思いますが、私は主に2つのメリットがあると考えています。

  • 生産性の向上
  • 業務の効率化

働き方改革が叫ばれる中、生産性を落とさずに就業時間内で作業を完了できるかを求められることが多くなってきました。

働き方改革を実現するためにも生産性の向上や業務の効率化は避けて通れない道だと思いますが、段取りを上手く進めることは、その実現に大きく寄与します。

生産性の向上

何をするのかはっきりしない状態で作業を開始しても、何から手を付けて良いかわからなければ、作業はすぐに停滞してしまいます。

作業のスコープや優先度を明確にすることで、作業を停滞させることなくスムーズに進めることができます。また、スコープがはっきりしていることで作業の手戻りを減らすことにも繋がるため、リソースを無駄なく最大限に活用することができます。

プロジェクトを進める中で発生するであろうリスクを事前に洗い出しておくことで、実際に問題が発生した場合でも速やかに対応することができ、作業の停滞を最小限に留めることができます。

業務の効率化

作業を進めていると様々なことが起こりますが、何かあるたびに手を止めて確認していては、作業も思うように進みません。

大きなプロジェクトになればなるほど対応する人数も増えますが、それぞれが何かあるたびに手を止めていては、結果として膨大な工数を無駄に消費することになります。

作業の手順やフローを明確にしておくことや、プロジェクトの中で使用する定義を明確にしておけば、何か事が起こっても速やかに対応することができるため、作業を効率的に進めることができます。

段取りする上で意識していること

私はクオリティマネージャーとしてテスト工程をマネジメントしており、プロジェクト計画書やテスト計画書を作成しています。

その活動こそが「段取り」に当たりますが、私がプロジェクトの「段取り八分」を目指すために意識している観点がありますのでご紹介します。

ステークホルダーとスコープを整合する

プロジェクト計画書やテスト計画書を作成している方は必ず意識していますが、私は特にテストのスコープについてステークホルダーと整合するようにしています。

ソフトウェアテストの7原則に「全数テストは不可能」という原則があります。

その原則通り全てをテストするのではなく、影響範囲やスケジュールなどを考慮してテストのスコープを決めるのですが、「すること」よりも「しないこと」を整合できるように努めています。

何をどのようなテストをするのか決めることは、テストをスムーズに進める上で重要なのは間違いないです。

しかし我々がテストのスコープではないと考えていることを、ステークホルダーがテストのスコープだと考えているケースは少なくありません。

ステークホルダーとの認識齟齬は、追加のテストや作業の手戻りが発生するなど、納期遅れの原因になることがあります。

そのため「テストしないこと」を事前にステークホルダーと整合しておくことが重要だと考えます。

プロジェクトメンバーと手順を共有する

プロジェクト計画書やテスト計画書でWBSを作成し、メンバーが何をすべきなのか明確になっていたとしても、その1つ1つを具体的にどう進めれば良いのか決めていなければメンバーの手が止まります。

メンバーの手が止まるだけでなく、プロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーも、その都度メンバーに指示したり、メンバーからの質問に対応しないといけなくなり、思うように進捗が上がらなくなります。

そのためメンバーが作業の手を止めることがないように、WBSで細分化したアクティビティやタスク単位で、作業方針や作業フロー、ルールを定義するようにしています。

その際に注意しているのが、それぞれの目的や意図を合わせて明示しておくことです。

プロジェクトが進むと想定していない様々なことが起こりますが、目的や意図を明確にすることで、メンバー1人1人が応用を利かせた対応がとれるようになります。

プロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーの指示がなくても、メンバーだけで自走してプロジェクトを進めることができるようになっていきます。

腹八分で割り切る

プロジェクトは生き物に例えられるように、動き出すと何が起こるかわかりません。

「段取り」が重要なのは間違いありません。

しかし事前に完璧な「段取り」を済ますことは困難ですし、あまりに色々なことを決めすぎても、実際の想定と違う状況になり労力が無駄になることがあります。

そのため「仕事二分」を実現するために「段取り」に拘るものの、その「段取り」も目一杯やるのではなく「腹八分」に抑えるようにしています。

具体的には成果物についてと、目に見える範囲や直前のアクティビティやタスクに対して目一杯段取りを進め、以降のタスクについてはザックリした方針だけ決めておき深追いしません。

それらはプロジェクトが動き出してから段階的に詳細化することで、段取りにかかる労力を分散できるようにしています。

さいごに

昨今はウォーターフォールだけでなくアジャイルの開発プロセスを採用するプロジェクトも多くなっており、状況の変化に対するスピード感が必要になります。

プロジェクトが動き出すと何が起こるかわからないため、想定外の事態が発生したときに、あれもこれも手を出していると、その変化に対応しきれません。

想定外の事態に「仕事二分」の労力の全てを注げることができれば、プロジェクトを成功に導くことができるのではないでしょうか。

私もクオリティマネージャーとして「段取り八分」を徹底し、3割の成功を手にできるようにこれからも邁進したいと思います。

※1
一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)
企業IT動向調査報告書 2023
https://juas.or.jp/cms/media/2023/04/JUAS_IT2023.pdf

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