テストエンジニアが身につけておきたいスキルの一つ「論理のスキル」。
「論理の言葉」の意味や働きに注意が向くようになったら、文や文章の読み書きで実践していきましょう。
この連載では、「論理スキル“実践編”」と題して、「文章の筋道を把握する、主張を理解する」「文や文章の筋道を組み立てる」ことに役立つ 推論の形 を見ていきます。
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前回「“または”を使って推論する」では、“または”という言葉(連言)を使った推論の形を取り上げました。
今回は、条件を表す言葉“ならば”(条件法)を用いた推論の形を見ていきます。
前回クイズ解答
問題(再掲)
※第3回の問題で、図版に誤りがございました(問3が間違っています)。
ご覧になった方を混乱させたことをお詫び申し上げます。
以下に正しい図を掲載します。
解答
問1。「Pか、またはQ」に対して、一方の否定から他方の肯定を結論する、選言三段論法の妥当な形をしています。
問2。一方の肯定から他方の否定を結論とする、選言三段論法の妥当でない形です。実行手順の問題とテスト環境の問題は両立し得る事象です。
問3。ふたつのモードは「相互に切り替えて利用できる」ことから、同時には一方のみが有効と考えられます。排他的な“または”と言えるので、この推論は妥当です。
仮言三段論法 ― “ならば”を使って推論する
“ならば”の性質と推論
こんなことを言われても――
今日中にリリースがないなら、明日のテストは中止だ。
これだけでは明日のテストについてはなんとも判りません。
が、ここに「今日はリリースはないってよ」という情報が加わると、「明日のテストは中止だ」と断言してよさそうに思えてきます。
あるいは、「例の課題を解決できないなら、今日中のリリースはない」といった情報が加わると、「例の課題が解決できないなら、明日のテストは中止だ」という新たな主張が得られます。
“ならば”(条件法)は推論で大活躍をする論理の言葉で、考えを進めたり議論をしたりする際に、言葉を変えたり隠れたりして頻繁に現れます(この節にも2ヶ所隠れています)。
この言葉を使った推論のよい形・よくない形を理解しておきましょう。
“ならば”を使って、前提から結論を導く
前提1が仮言判断(“ならば”を用いた条件つきの主張)である推論を 仮言三段論法 といいます(文献によっては、条件三段論法とも)。
前提2にどんな文が来るかによって、純粋仮言三段論法 と 混合仮言三段論法 があります(図4-1)。
- 純粋 仮言三段論法(図4-1 上):前提2も仮言判断。結論も仮言判断になる
- 混合 仮言三段論法(図4-1 下):前提2が断言判断。結論は断言判断になる
混合仮言三段論法から説明します。
混合仮言三段論法
“ならば”と、断言を組み合わせる
前提1「PならばQ」に対する断言形式の主張を前提2で述べることで、結論を引き出します。結論は断言判断 になります。
ふたつの形があります。
混合仮言三段論法・(1)肯定式(前件肯定)
ひとつめは、前提1「PならばQ」に対して「P(前件)は成り立つよ」と言う形です(図4-2)。
①PならばQ。
②P。
従って、③Q。
①「PならばQ」に対して、②「P(前件)が真」が加わると、③「Qは真」が結論として導けます。
この形は「肯定式(Modus Ponens, MP)」「前件肯定」 と呼ばれます(文献によっては構成式とも)。
「論理のかたち。推論とは」冒頭の例でいうと:
例:
①雨が降っているなら、Aさんは自宅で過ごす。
②今日は雨だ。
だから、③今日、Aさんは自宅にいる。
混合仮言三段論法・否定式(後件否定)
ふたつめは、「Q(後件)は成り立たないよ」と言う形です(図4-3)。
①PならばQ。
②Qではない。
従って、③Pではない。
①「PならばQ」の対偶は、「QでないならばPではない」です。そして②「Q(後件)が偽(=Qではない)」から、③「Pは偽(=Pではない)」という結論が得られます。
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