本連載ではプロジェクトマネジメントの全体像と、プロジェクトを成功させる上で最低限抑えるべき知識と技術はもちろん、プロジェクトを炎上させないための技術やコツをお伝えしたいと思っています。
みなさんのプロジェクトが今以上に充実し、笑顔でプロジェクト終結を迎えられるよう一緒に学んでいきましょう。
第9回となる今回のテーマは「プロジェクトの品質マネジメント」です。
<プロジェクトマネジメント成功の技術 連載一覧>※クリックで開きます
【第1回】プロジェクトマネジメントとは何か? [全文公開中]
【第2回】プロジェクトマネージャーの役割とは?
【第3回】ステークホルダーマネジメントの重要性と進め方
【第4回】プロジェクトの統合マネジメント、7つのプロセス
【第5回】プロジェクトにおけるスコープマネジメント、6つのステップ
【第6回】WBSだけでスケジュールはできない!正しいスケジュールの導き方[前編]
【第7回】WBSだけでスケジュールはできない!正しいスケジュールの導き方[後編]
【第8回】コストをプロジェクトの武器にする!
【第9回】目に見えにくいプロセス管理こそ品質達成の鍵
【第10回】プロジェクトのリスクマネジメント[前編]リスクを徹底的に洗い出す
【第11回】プロジェクトのリスクマネジメント[後編]リスク分析とコンティンジェンシープラン
【第12回】人がプロジェクトの源泉!チームは育てて強くする[前編]
【第13回】人がプロジェクトの源泉!チームは育てて強くする[後編]
【第14回】コミュニケーションの本質を知り、使いこなそう!
【第15回】笑顔で終わるプロジェクトはここが違う!プロジェクトクロージングのTODO [全文公開中]
品質をマネジメントする、とは
プロジェクトマネジメントにおける品質のマネジメントとは、ステークホルダーの目的に合致させるためにプロジェクトとプロダクトの品質要求事項を計画し、組織の品質方針等を取り入れた形でマネジメントしていく活動です。マネジメントの対象は「プロジェクトの品質」と「成果物の品質」の主に2つです。
品質のマネジメントと聞くと、不具合やバグが出ないようにするといったイメージになるかも知れませんが、たしかにそれは品質の1つではありますが全てではありません。成果物だけではなく、プロジェクト、つまり進め方自体の品質管理にフォーカスしていることが重要です。例えば、プロジェクトのスケジュールが計画に対して維持されているか、予算内で実行できているか、これらのスケジュールマネジメントやコストマネジメントにかかる部分もプロジェクトの品質マネジメントにおける品質対象です。
品質マネジメントは以下3つのステップ(プロセス)で行います。
品質のマネジメントを計画する
ステークホルダーの真のニーズを確認して「品質要求事項」を特定することから計画ははじまります。またCOQ(Cost Of Quality)、つまり品質を担保するために必要なコストを考慮し獲得しておくことが大切です。
1) 病気もプロジェクトも予防が大切
品質にかかるコストは以下の4種類に分類されます。
大切なのは適合コストと不適合コストのバランスです。適切に適合コストを使わないと不適合コストの発生確率を高めることになりますが、適合コストばかりかけすぎると利益を圧迫してしまうことになります。コスト効果としては一般的に適合コスト>不適合コストをかけた方がよいです。
2) 「よい品質」にはばらつきがある
一言で「よい品質」「品質が保たれている」といっても、多くの場合同じ品質が指されていることはありません。Aさんは「XXまで担保されればよい品質だといえる」と思っていても、Bさんは「それでは不十分でXXXでなければ担保されているとは到底言えない」といった感じです。また顧客とのやりとりで「高いクオリティで」という曖昧な要求を受け取る経験も少なくないはずです。
近代的品質マネジメントの提唱者は以下のように言っています。
「品質とは要求条件の一致である」
「無欠陥(Zero Defect)、検査より予防」フィリップ B.クロスビー
「品質は誰かにとっての価値である」
G.M.ワインバーグ
つまり、「品質がよい状態」とは、ステークホルダーの要求を満たし、ステークホルダーにとって価値あるものを提供することと言えますが、見ての通り「よい品質」という定義の曖昧さや捉え方によるばらつきがある(起こる)ことも同じように示していますね。
だからこそ、プロジェクトが考え目指す品質や組織で定義されている品質方針を踏まえて「どうすれば実現できるか」を品質マネジメント計画書などのドキュメントで明らかにし、みんなで品質視座をあわせて目指していけるように準備しましょう。
<品質マネジメント計画書に記載される基本的事項>
- プロジェクトの品質基準
- 品質に関する役割と責任
- 品質レビュー対象やレビュープロセス
- 品質マネジメント活動や方法
- 品質ツール
- 不適合や是正措置プロセスなどの手続き規定
3) 品質を測定する尺度を決めておく
品質尺度とは、品質の適合を「どのように検証するか」を具体的に規定したものです。クオリティメトリクス(QM)と呼ばれることもあります。例えば、時間通りに完了したタスクの割合、突き当たりの合計ダウンタイム、コード行あたりのエラー、顧客満足度、テスト網羅率の基準としてテスト計画がカバーする要求事項の割合などがあります。品質そのものへの考え方やばらつきがある、とお伝えしたように、品質を何かしら測定する尺度を持っておくことで「こんなはずじゃなかった、これは違う」というトラブルや認識齟齬を予防しましょう。
4) 品質指標
上記の品質尺度に対して、品質指標は「品質を満たしているということはどういう状態か」を定義しておきます。品質指標が顧客の要求を満たした状態か、できる限り具体的な状態を定義しておくことが品質尺度と同様に大切です。
品質のマネジメント
品質のマネジメントでは、組織の品質方針をプロジェクトに組み入れて、品質マネジメント計画を実行します。品質のマネジメントは場合によって「品質保証」とも呼ばれます。プロジェクトマネジメントの観点では、品質保証の焦点はプロジェクトの「プロセス」にあるとともに「検査より予防」の考え方と密接に関連しています。その為、計画した品質を担保する仕掛けや仕組み(規約・ガイド)が正しく機能しているかを<確認>することがが重要です。
1) どうやって品質確認する?QC7つ道具を押さえておこう!
品質標準と運用基準を満たすために、プロジェクトでは常に品質改善活動を行っていかなければなりません。継続した活動の中で、無駄なくプロセスを実行できるようパフォーマンスの測定結果を確認し、問題点を改善していきましょう。改善点を洗い出すためには、まず品質コントロール測定結果を分析します。分析には「QC7つ道具(7つの手法)」や「品質監査」を用いて問題点や改善につながるヒントを抽出し、必要なプロセスの改善点をまとめて必要に応じ変更(変更要求)を行いましょう。
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