実践1on1[3] 〜 相手に合わせたコミュニケーション方法とは?

ソフトウェア開発の世界では、アジャイル開発やスクラムが一般的になってきました。そのアジャイル開発のコアとも言えるのが、対話や協調です。この連載では、アジャイル開発におけるコミュニケーション・コラボレーションスキルを解説しながら、ファシリテーションスキルのレベルアップを目指します。

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実践1on1[2] 〜 コミュニケーションの方法を使い分けよう!
実践1on1[3] 〜 相手に合わせたコミュニケーション方法とは?

第3回目のテーマは、1on1においてコミュニケーション方法を使い分けるために「コミュニケーションのタイプ」を学びます。

前回のおさらい

前回はコミュニケーションの方法について解説しました。

  1. コンサルティング
  2. ティーチング(トレーニング・メンタリング)
  3. カウンセリング
  4. ファシリテーション
  5. コーチング
  6. 1on1

それぞれ特徴があり、使い分けができることがわかりました。

今回はこれらの方法の使い分け方を解説します。

コミュニケーション相手別の使い分け

私はアジャイルコーチとして働いていますが、コーチングだけでなくコンサルティング(可能な限り現段階でのベストプラクティスを提供する仕事)も行っています。

たとえば、ITに詳しくない方や、新卒で社会人になったばかりの方に対しては、コンサルティングやティーチングが有効です。なぜなら、まだ知らないことが多いため、課題と解決策の間に大きなギャップがあり、なかなかゴールにたどり着けない状況になりがちだからです。

逆にCTOやエンジニアリングマネージャなど、相手のITスキルが高い方の場合はどうでしょうか? 彼らは私に負けない知識や経験を持っている可能性があります。下手をすれば私より詳しいかもしれません。あるいは、知識や経験がなくても、それを身につけるポテンシャルを持っているかもしれません。この場合、コンサルティングやティーチングによって、学べる機会を奪ってしまう可能性もあります。

そういった人たちに「コンサルティング」や「ティーチング」は有効に機能しません。

こういった問題を避けるために、相手や課題の領域によって、コミュニケーション方法を変えていく必要があります。

コミュニケーション方法の使い分け
コミュニケーション方法の使い分け

コミュニケーション方法の変化についてまとめたのが上記の図です。代表的な3つの方法をベースに解説します。

まず、コンサルティングは解決策を伝える方法なので、未経験者やすぐに解決策が欲しい人に対して有効な手段です。デメリットをあえてあげるなら、学ぶ機会が失われます。

次に、ティーチングやトレーニングは、新しい方法やスキルを学ぶ効果的な手段です。残念ながら、誰でも有効的に学びを得られるわけではなく、学べばスキルを身につけられる人にマッチする方法と言えます。参加するだけでは得られないことも多く、学ぶ姿勢や学びをのちに活用できるスキルが必要です。

最後のコーチングは、相手の中に答えがあるのが前提となるため、あくまで相手が答えを見つけるための支援を行う方法です。支援と入っても、助けるのではなく、一緒に答えを見つけていく伴走型の方法になります。よって、未経験者にコーチするよりも、経験者や自律して考えられる人に対して行うケースが多くなります。

このように、相手の経験やスキルによって、コミュニケーション方法を使い分けて対応していくのが効果的です。相手が求めるものに対して、適切な方法を選ぶのがプロフェッショナルなコミュニケーションの使い手と言えます。

余談ですが、前回でも解説した通り、1on1はコミュニケーション方法を、相手や状況に合わせて使い分けるコミュニケーション方法です。よって、最低限でも上記3つの方法を理解し使いこなせるようになる必要があり、相手や状況に合わせてうまく切り替えながら、クライアント(部下)に成果を出させなければなりません。

さまざまな方法を知るだけでなく、成果も出さなければならないのが1on1が難しい理由のひとつだと思います。

コミュニケーションタイプ別の使い分け

相手の経験やスキルによって、コミュニケーション方法を使い分ける必要性を解説しました。もうひとつ考えておきたいことがあります。それは、コミュニケーションのタイプです。

コミュニケーションのタイプについては、有名なもののひとつにDiSC理論(参考: DISC assessment ‐ Wikipedia)があります。これはアメリカの学者が提唱したコミュニケーション理論で、おおきく4つのタイプに分類しています。

支配タイプ(D: Dominance)は、問題を克服するために、積極的に力を利用するタイプです。いわゆる従来型のリーダータイプで、チャレンジ精神が旺盛で、成果を追い求める傾向があります。

感化タイプ(i: influence)は、問題を解決するために、人をうまく操るタイプです。持ち前の社交性を活用しながら場の雰囲気を読み取り、着地点をうまく見つけるスキルが高いタイプと言えます。

提案タイプ(S: Submission)は、問題解決のアイデアを受け入れ、決まったことに対しては従順に遂行していくタイプです。協調性が高いため、コミュニケーション相手の立場に立って物事を考えてくれるタイプと言えます。

コンプライアンスタイプ(C: Compliance)は、ロジカルに物事を考えるタイプです。計画を重視し、法令や規則、ルールを厳守します。少し堅いイメージがありますが、慎重に物事を進めてくれる安心感があるタイプと言えます。

血液型占いと同じく、すべての人類が4つのタイプに分けられるわけではないですが、大きく分類することで、それぞれの特徴に合わせたコミュニケーション方法を考えられます。それぞれのタイプ別のコミュニケーションを見てみましょう。

支配タイプへのコミュニケーション

支配タイプは、ぐいぐい進むリーダータイプです。遠回しな表現よりも、単刀直入なコミュニケーションを好む傾向があります。

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SQRIPTER

藤原 大(ふじはら だい)

スーパーアジャイルコーチ、株式会社せかい 代表取締役

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スーパーアジャイルコーチ、エンジニアリングマネージャ、『リーン開発の現場』の翻訳者のひとり。創造的、継続的、持続的なソフトウェア開発の実現に向けて奮闘中。週末に娘と息子とお昼寝しながら世界のビーチや離島を旅する夢を見る。

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