現役PMが徹底解説。プロジェクトマネジメント成功の技術

本連載ではプロジェクトマネジメントの全体像とプロジェクトを成功させる上で最低限抑えるべき知識と技術はもちろん、プロジェクトを炎上させないための技術やコツをお伝えしたいと思っています。

みなさんのプロジェクトが今以上に充実し、笑顔でプロジェクト終結を迎えられるよう一緒に学んでいきましょう。

第6回となる今回のテーマは「スケジュールマネジメント」です。

「スケジュールマネジメント」という言葉からどのような活動をイメージしますか?
プロジェクト憲章でプロジェクトの目的目標が明らかになり、それを達成させる為のスコープも決まりました。次にやることは「そのプロジェクトの目的目標を、スコープの範囲内でいかにして達成するか」という詳細な計画づくりです。

この「計画づくり」&「計画の管理」がセットになって、詳細化されたものがプロジェクトマネジメントで云う「スケジュール」であり「スケジュールマネジメント」です。

適切な計画なしにプロジェクトを実行することは決してできませんが、

  • 計画方法がわからない
  • いつもスケジュールが破綻してしまうが、よりよいスケジュール計画方法がわからない

といった課題を抱えている方も多いと思います。

今回と次回の2回に分けて、スケジュールを立てる為の準備とスケジュール作成方法を一緒に学んでいきましょう。

プロジェクトマネジメント成功の技術 連載一覧>※クリックで開きます

【第1回】プロジェクトマネジメントとは何か? [全文公開中]
【第2回】プロジェクトマネージャーの役割とは?
【第3回】ステークホルダーマネジメントの重要性と進め方
【第4回】プロジェクトの統合マネジメント、7つのプロセス
【第5回】プロジェクトにおけるスコープマネジメント、6つのステップ
【第6回】WBSだけでスケジュールはできない!正しいスケジュールの導き方[前編]
【第7回】WBSだけでスケジュールはできない!正しいスケジュールの導き方[後編]
【第8回】コストをプロジェクトの武器にする!
【第9回】目に見えにくいプロセス管理こそ品質達成の鍵
【第10回】プロジェクトのリスクマネジメント[前編]リスクを徹底的に洗い出す
【第11回】プロジェクトのリスクマネジメント[後編]リスク分析とコンティンジェンシープラン
【第12回】人がプロジェクトの源泉!チームは育てて強くする[前編]
【第13回】人がプロジェクトの源泉!チームは育てて強くする[後編]
【第14回】コミュニケーションの本質を知り、使いこなそう!
【第15回】笑顔で終わるプロジェクトはここが違う!プロジェクトクロージングのTODO [全文公開中]

まずはじめに目標を細分化すること

プロジェクトの計画は「こう進めていけばプロジェクトが完成(成功)するであろう」というシナリオ作りだと考えましょう。目的目標をどのようにすれば行動に移せるか、行動するために不足している情報や漏れはないか?とイメージを膨らませ、何度も繰り返して実行に移せるようなサイズや分類まで分解することからはじめます。これを「要素分解」と呼びます。

間違っても、いきなり目標からすぐにスケジュールをひく、ということはないですよね?

スケジュールマネジメントのステップ

PMBOKではプロジェクトのスケジュールマネジメントを以下6つのステップ(プロセス)で行うとしています。※1

アクティビティの定義

目標を細分化することを「要素分解」と言います。つまり要素分解された小さな要素ひとつひとつの集合体が「目標」です。

このように目標を要素に細分化し「何をしなければならないか」を考える技法が、みなさんもよくご存知のWBS(WBS:Work Breakdown Structure)です。そして最終目標を細分化したものが「成果物」と呼ばれ、WBSではその成果物をさらに要素→アクティビティに分解していきます。アクティビティはその名の通り「活動・作業」ですね。

1) 要素分解の王道ツールWBSの基本

WBSは一般的にツリー構造で作られます。
最も上は目的目標やプロジェクト名、次(2階層目)に成果物、その下に要素成果物と呼ばれる「上の成果物をさらに分解するとどのような要素か(何が必要か)」を示し、最後に要素成果物を完成させるために必要な作業としてのアクティビティを書き出します。このアクティビティが一般的には活動タスクとなります。

WBSは作成すればするほどスキルがあがり、作成スピードもアップします。みなさんもご自身の身近なものや予定などでWBS要素分解の練習をしてみましょう!

2) 要素はどこまで分解するの?

要素分解をどこまで行うか?という質問を頂きますが、プロジェクトの規模などにより変わってきます。
大きな粒度で活動を管理してもよい場合もありますが、あまりに大きすぎると活動自体が見えにくいなどの問題が起こります。同時に小さすぎても管理そのものに工数を費やしてしまう場合も。プロジェクト管理できる適当なサイズになるように意識してみましょう。

中にはすぐに分解できない要素もあるかもしれません。無理をして全ての作業を特定しようとせず、将来的な作業などは段階的に検討していきましょう(これをローリングウェーブ計画法と呼びます)。完璧なWBSを作りたいという気持ちも大切ですが、時間をかけすぎてかえって実作業にあてる時間に影響がでないようにしたいですね。

3) 要素分解の最終チェック

要素とは「事項の成立やその効力に必要で不可欠な条件」です。抜け漏れがないように確認していきましょう。
筆者の経験からWBSの検討をキックオフ(プロジェクト立ち上げ時)のイベント/アクティビティとしてチームメンバと行うこともおすすめします。

  • 1つ下にある全ての作業を実施するだけで作業が終わるか (必要充分)
  • 各作業に必要となるものが他の作業で作成されているか (INPUT)
  • 各作業で作成されたものが他の作業で利用されているか (OUTPUT)

 POINT  作成は上から下へ、再び下から上へ確認する。

4) WBSとガントチャート(バーチャート)の違いと作成順序

よく「WBSとガントチャート」を混同しているケースを見かけます。WBSは要素やアクティビティを明確にするために使う技法で、ガントチャート(バーチャート/工程表)はそれに対して開始/終了日や予定期間を明確にしていく技法です。ですので、ガントチャートから作り始めることは期日が先に立ってしまい、そもそも何をしなくてはならないのかという部分が不足してしまう可能性がありますので「WBS作成 → ガントチャート作成」という流れをセットで行うようにしてください。

作業の依存関係を確認して順序を決める:アクティビティの順序設定

アクティビティに順序をつけるということはどういうことでしょうか?

WBSはあくまで要素を洗い出す技法なので、要素やアクティビティの順序関係は意識しないというルールになっています。そのため、洗い出したアクティビティを実行するために「何をどの順番で対応するのか?対応するのがよいか?」ということを決めていく必要があるのです。「これから手をつけられそうだからとりあえず…」と思いおもいに作業実施したり、闇雲に活動するのではなく、様々なプロジェクト制約の中で効率よく論理的な作業順序を明確にして「さあ、この順番で進めていこう」と定義することができるのです。

1) XXが終わらないとXXに進めない?「論理的順序関係」

順序設定では、例えば

  • 採用が終わらないと教育研修ができない
  • 採用と教育研修のマニュアル作りは同時にできる

というように「何かが終わらないと次ができない関係性」にあるのか「同時並行できる関係性」にあるのかを考えて整理します。ただし、最終的には「同時にやりたいが対応者がいない」など全体的な考慮を加えた上でスケジュールが決定されます。この順序設定検討の手法をプレシデンス・ダイアグラム法(PDM)※2と呼び、PDMはクリティカルパス法の前提となる手法です。

PDMでは論理的順序関係や依存関係に以下4つのパターンがあります。

  1. 終了ー開始関係(finishーstart:FS)
    あるアクティビティが完了すると、関連するアクティビティが開始できる(このケースが最も多い)
  2. 終了ー終了関係(finishーfinish:FF)
    あるアクティビティを終了すると、関連するアクティビティも終了できる
  3. 開始ー開始関係(startーstart:SS)
    あるアクティビティが開始されると、関連するアクティビティも開始できる
  4. 開始ー終了関係(startーfinish:SF)
    あるアクティビティの完了は、先行アクティビティの開始に左右される

2) 整理した順序はネットワーク図に整理する

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SQRIPTER

西田 美香(にしだ みか)

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専門商社でマーケティングや海外事業会社の立ち上げなどを経験後、プロジェクト課題を抱える企業をより近くでサポートしたいという思いから、現在はプロジェクトマネジメントを専門に従事。戦略検討から実行フェーズまでプロジェクトの全段階にハンズオンで支援している。

PMP/CSM(認定スクラムマスター)/MBA(経営管理修士)/EMBA(経済学修士) 

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